日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-OS 海洋科学・海洋環境

[A-OS16] 海洋化学・生物学

2019年5月27日(月) 15:30 〜 17:00 303 (3F)

コンビーナ:山田 奈海葉(国立研究開発法人 産業技術総合研究所)、安中 さやか(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、齊藤 宏明(東京大学大気海洋研究所)、座長:小埜 恒夫(水産研究・教育機構)、小杉 如央(気象研究所)

16:15 〜 16:30

[AOS16-04] 西部北太平洋における人為起源窒素の分布とその変動の復元

*渡辺 豊1藤田 晃市1李 勃豊1 (1.北海道大学)

キーワード:人為起源窒素、西部北太平洋、パラメタリゼーション

【はじめに】
北太平洋では、北東アジアでの急速な人口増加や工業の発展により人為的な窒素が急激に増加している。環境へ放出された窒素は河川や大気を通して海洋へ硝酸(N)としてもたらされ、沿岸域の富栄養化や海洋酸性化の進行に影響を与えている。また、海洋の窒素循環と炭素循環は密接に関係しており、海洋への人為起源窒素(Nanth)の流入は海洋の窒素循環や海洋への二酸化炭素の取り込みにも大きな影響を与える。

しかし、海洋にもともと存在する窒素とNanthを区別することは難しいため、海洋におけるNanthの動態解明の実現に至る見積り法の確立には未だ至っていない。このため、海洋生物生産への影響の定量的な全貌についてもその時空間的な詳細について明らかにされていない。さらに、Nの観測データ(Nobs)は時空間的に離散的で乏しい。その理由は、海洋のNの測定がその他の観測成分(水温(T)、塩分(S)、圧力(P)、溶存酸素(DO) )に比べて煩雑で時間がかかり、さらに、海洋観測船を用いての観測を基盤とせざるを得ない制約条件のためである。

そこで、本研究では、海洋中のNのパラメタリゼーションを構築することで、その時空間的分布を明らかにし、Nanthの動態解明の実現に至る見積り法の開発し、これを基盤に、西部北太平洋におけるNanthの分布とその変動を復元することを目的とした。

【方法】
高精度高確度なデータベース(WOCE、PACIFICA等)より得られた海洋の水理データ群を基盤に、一次重回帰モデルを用いて2000〜2013年の西部北太平洋(20°N〜55°N, 120°E〜160°E)における深度0m〜500mのNのパラメタリゼーション(Np)の構築を行った。

Npf(T, σθ, DO) =a•T + b•σθ + c•DO + d  式(1)

さらに、137oE測線に沿ってNobsとNpとの時系列解析を行い、Nobsの変化量(ΔNobs)とNpの変化量(ΔNp)の差からNanthの増加速度(ΔNanth/Δt)の見積もりを行った。

【結果と考察】
Nのパラメタリゼーションの構築を行ったところ、実測値と高い相関を持つ以下の式を得た。

Np = – 2.24•T – 4.70•σθ – 0.0970•DO + 182.2 (n = 9164, r2 = 0.988, RMSE = 1.25) 式(2)

この式を基盤に、1980年から2014年までの137°E測線の亜熱帯海域表層0–150mにおけるΔNanth/Δtは有意に増加していることが明らかになった。