日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-OS 海洋科学・海洋環境

[A-OS17] 黒潮大蛇行

2019年5月28日(火) 10:45 〜 12:15 106 (1F)

コンビーナ:美山 透(国立研究開発法人海洋研究開発機構・アプリケーションラボ)、碓氷 典久(気象研究所)、瀬藤 聡(国立研究開発法人水産研究・教育機構中央水産研究所)、座長:美山 透瀬藤 聡碓氷 典久

11:00 〜 11:15

[AOS17-02] 関東地方夏季気温場への日本南方黒潮流路の影響

*杉本 周作1 (1.東北大学大学院理学研究科)

キーワード:黒潮蛇行流路、関東・東海沖海面水温、関東地方地表気温、領域大気モデル実験

冬季の黒潮/黒潮続流上では多くの熱が上空大気に向けて放出されており、この熱交換関係は黒潮/続流が大気場に影響を及ぼすことを示している。一方で、夏季大気場への黒潮/続流の影響は明らかになっていない。これは黒潮/続流とその直上大気の温度差が小さいことや黒潮/続流に伴う海面水温前線が弱いことが要因としてあげられる。そのような状況の中、本研究では日本南方海域に焦点をあて、高解像度人工衛星観測資料を用いて夏季海面水温変動の振幅の大きさを調べた。その結果、海面水温変動は関東・東海沖で卓越することがわかり、黒潮が本州南方で蛇行する時期ほど関東・東海沖海面水温が上昇傾向にあることを指摘した。このことは、黒潮蛇行には、(1)伊豆諸島周辺で北向きに転向した黒潮が関東地方南岸近辺にまで流入し、(2)黒潮の一部が蛇行による反時計回りの渦の北縁沿いに東海地方沿岸を東から西に流れることを反映したのであろう。続いて、黒潮流路に起因した関東・東海沖海面水温が上空大気場に与える影響を同定・評価するために、気象庁非静力学大気モデルを用いて数値実験を実施した。本実験では海面水温の影響を十分に分解できるよう空間解像度5kmの実験を設計した。実験の結果、関東・東海沖での暖水の出現に伴い上空への蒸発量が増え、対流圏下層での北向き水蒸気輸送により関東地方の水蒸気量が増加することがわかった。そして、この水蒸気量増加に起因した下向き長波放射量の増加が地表気温の上昇に寄与することを指摘した。加えて、AMeDAS観測資料を用いた結果、関東地方の地表気温は関東・東海沖海面水温と有意な関係にあることが確認され、本数値実験を支持する結果が得られた。以上より、夏季においては、本州南方での黒潮の流路形態が、大気海洋相互作用系および日本の気候場の理解に重要であることを提案する。