日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] Eveningポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-OS 海洋科学・海洋環境

[A-OS18] 海洋物理学一般

2019年5月28日(火) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:川合 義美(国立研究開発法人海洋研究開発機構 地球環境観測研究開発センター)、東塚 知己(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、北出 裕二郎(東京海洋大学大学院海洋科学技術研究科)

[AOS18-P02] 衛星重力観測と衛星海面高度計から見る2004年スマトラーアンダマン地震と2012年インド洋地震に伴うジオイド高変化と海水面高度変化

★招待講演

*田中 優作1 (1.東京大学地震研究所)

キーワード:ジオイド高変化、海面高変化、衛星重力観測、衛星海面高度計、地震

2004年と2012年にスマトラで発生した巨大地震が、海域における局所的かつ不可逆的なジオイド高変化をもたらした。これについて、海域のジオイド高と海水面高度の変化に注目した研究結果が、2019年2月18日現在、TAO誌に受理され印刷中である。本講演では、この内容について紹介したい。以下は、当該論文の概要と、図の説明である。

重力観測衛星GRACEのデータの解析によって、2004年スマトラーアンダマン地震(Mw9.2)及び2012年インド洋地震(Mw8.6)が引き起こした、地震時と地震後の長期的な地球重力場とジオイド高の変動を捉えた。その結果、地震現象が循環的に発生する事とは逆に、重力場とジオイド高が不可逆的に変化した事が示された。この重力場とジオイド高変化は海域において発生しているため、次に、そこから予測される海面高変化の検出を衛星海面高度計のデータを用いて試みた。最小二乗法やEOF解析を利用した海面高変化の時系列解析を行なった結果、ジオイド高変化に一致する海面高変化は、衛星海面高度計のデータにおいてはエルニーニョ等に起因する熱膨張の寄与にほぼ埋没しており、stericな海水の移動とnon-stericな海水の移動が、データの取得方法によって別個に得られる事が定量的に示された。

[図] GRACE衛星が観測した2004年スマトラーアンダマン地震(Mw9.2)と2012年インド洋地震(Mw8.6)に起因する不可逆的なジオイド高変化。空間分解能は300km程度である。(a): 2004年スマトラーアンダマン地震の本震に伴うジオイド高変化。図中の黒い四角は断層を模式的に表したもので、赤と白のビーチボールは断層のメカニズムを示し、その位置は震央を示す。(b): 2004年スマトラーアンダマン地震の直後から現在2016年5月までに進行した、粘弾性緩和に起因すると考えられる地震後のジオイド高変化。(c): (a)と(b)の和。(d): 2012年インド洋地震の本震に伴うジオイド高変化。(e): 2012年インド洋地震の直後から現在2016年3月までに進行した、粘弾性緩和に起因すると考えられる地震後のジオイド高変化。(f): (d)と(e)の和。(g): (c)と(f)の和。(h): 地図上に赤丸で示した点の時系列(季節変化は補正済み)。地震発生前の平均値を0に設定しており、この値をオレンジの水平線で示している。黒丸が観測データで、赤は最小二乗法で観測データにフィッティングした曲線である。ダークグリーンの二本の鉛直線は2004年と2012年の地震発生時を示している。