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[AOS19-03] 新しい波動エネルギーフラックス式の熱帯波動伝播力学の解析への適用:海洋大陸-北オーストラリア域における熱帯総観規模波動擾乱の診断解析
キーワード:熱帯波動擾乱、波動エネルギーフラックス、波動エネルギ伝播
Aiki et al. (2017) によって導出された新しい波動擾乱エネルギーフラックス式を適用し海洋大陸—北オーストラリア域を伝播する熱帯総観規模波動擾乱の力学的診断を試みた。この波動エネルギーフラックスベクトルは熱帯や中緯度の様々なタイプの波動擾乱のエネルギー分散現象を評価するのに効果的であると考えられている。この波動エネルギーフラックスは渦動ジオポテンシャルフラックスに対しエーテル渦位ベースの回転流成分を含むフラックス項を付加することで定義されている。この付加的な回転流フラックス項を算定するためエーテル渦位ベースの流線関数と回転風の渦動成分をJRA-55大気再解析データから数値的逆解析手法により計算した。本研究で解析した熱帯総観規模波動は2—8日程度の周期性と3000—4000程度の東西波長を持つ (Fukutomi 2018)。この波動はインド洋から西太平洋に延びる平均モンスーン西風域に沿って8m/s で西向きに位相伝播する。また波動のトラフとリッジはこの地域で波列構造を形成している。一方、この波列上でトラフとリッジの東方増幅が群速度現象として発生する。波動エネルギーフラックス解析により、平均モンスーン西風上での波動エネルギー伝播が波列の下流発達を促し、この西風帯は熱帯の導波管としての役割を果たしている様相を示す。加えて、この波動エネルギーフラックスの分布と特徴を、伝統的な波動活動度フラックスのそれらと比較する。この新しいツールの熱帯や中高緯度の波動擾乱へのさらなる適用可能性についても議論する。