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[AOS19-09] インド洋上層 2000 m における一年周期のロスビー波
キーワード:インド洋、中層、線形準地衡ロスビー波
インド洋の現場観測は長らく散発的な船舶観測に依存しており、海盆規模の循環場や変動を観測だけから調べるのは困難であった。このような状況は2004年から始まったアルゴフロートの展開によって劇的に改善され、現在では海面から深度2000 mまでの水温塩分の鉛直プロファイルが高密度で取得されている。本研究ではこの水温塩分観測値、および深度1000 mにおけるアルゴフロートの漂流速度を用い、インド洋密度躍層下の圧力と水平流の一年周期変動を調べた。一年周期変動はアラビア海と南インド洋の10°Sから20°Sにかけて有意な振幅を示した。調和関数の位相に直線を回帰して鉛直波数を見積もったところ、南北両半球共に赤道付近から極に向かって鉛直波数が減少しており、鉛直波長は5°N/Sから20°N/Sにかけて5000 mから16 000 mに増加することがわかった。一方、コリオリ係数 f の絶対値は極方向に増加し、鉛直波数 m の極方向の減少と相殺するため、変形半径の逆数の自乗(f2m2/N2)は緯度に関する依存性を示さなかった (解析領域におけるブラントバイサラ振動数 N の緯度方向の変化は小さい)。静止場における線形準地衡ロスビー波の分散関係式に依拠すると、鉛直波数と変形半径が上記のような南北分布を持つ場合、経度・深さ断面におけるエネルギーの伝播曲線(ray trajectory)の角度は緯度が高くなるにつれ大きくなることが予想される。現場観測から計算した1年周期変動のエネルギー分布はこのような予想と整合的であった。観測から見積もった変動の等位相線の傾きも緯度が高くなるにつれ大きくなっており、これも分散関係式と鉛直波数の南北分布から得られる予想と整合する。これらの結果は、一年周期変動のエネルギーは緯度が高くなるにつれてより深くまで到達することを示している。