[AOS19-P09] 異なるデータ(NCEP⁄NCAR及びQSCAT)から得られたOFESの結果の南太平洋における再現性の検証
1 はじめに
OFESは海洋循環と海洋構造を、海面フラックス(運動量、熱、淡水)を入力することで高解像度に再現する数値モデルである。異なる海上風データセットであるNCEPとQSCATによって駆動された2種類のOFESrun(NCEPrun及びQSCATrun)の相互比較では、表層水温がほぼ同様であるのに対して、海洋内部の亜表層(100mの深度)において、北半球では10°N付近でNCEPrunがQSCATrunよりも水温構造が約50m浅い。また、東岸からの地衡流量の鉛直積分流量も異なる(NCEPrunがQSCATrunよりも10Sv大きい)(Kutsuwada et al .,2018)。
本研究では、北半球で確認された両runの水温構造の違いや、鉛直積分流量の東岸からの積分値における違いが南半球においても同様に表れるかを検証した。また、比較としてArgo観測データから格子化されたMOAA-GPVを用いた。
2 使用データ
OFESは、NOAAによって開発されたModular Ocean Model ver.3に基づきJAMSTECによって開発された高解像準全球海洋大循環モデルである。海面フラックスデータを入力して、高い時空間解像度で海洋循環場及び海洋構造の再現を可能にした。OFESの駆動外力として、NCEP/NCARにより作成された再解析データ及び、人工衛星QSCAT(QuikACAT)の散乱計データセットを与えている。
空間解像度は水平方向には0.1°×0.1°のものを1°×1°に平均した。鉛直方向には海面(2.5m)から6065mまでで間隔が5mから330mまで変化する54層のものを秋間法(Akima, 1970)を用いて10m間隔の補間を行った。
3 解析方法
水温T(℃)、塩分S(PSS)から求めた海面力学高度偏差を用いて、海面から水深hまで鉛直積分した地衡流量を算出した。その際、無流面を2000mとした。スベルドラップ流量は海面から無流面(風成循環が及ぶ最大深度)までの鉛直積分流量に相当し、コリオリパラメーターと海面応力の東西成分によって求められるエクマン層内の流量と地衡流の鉛直積分流量の和で表される。
本研究では、海洋データから得られる地衡流量と海上風データから得られる風成駆動流量が一致するかを見る。
4 結果
水温構造は10°S付近においてNCEPrunがQSCATrunよりも約50m浅く、東西積分流量は同緯度帯でNCEPrunがQSCATrunより10Sv小さい値となった。また、MOAA-GPVとの比較では、QSCATrunの水温は200m付近まで良く一致する一方、NCEPrunは50~400mで低く、東西積分流量は、QSCATrunがMOAA-GPVにほぼ一致する。以上より、北半球と同様に南半球においてもQSCATrunはNCAPrunよりも再現性が高いと言える。
両runを駆動する風応力回転場の東西平均値の南北分布プロファイルの比較では、 10°N付近に見られる正の極大値がNCEPはQSCATよりも大きく、10°Sにおける負の極大値も同様な特性が見られる。亜表層構造の違いも10°Nと10°Sで見られることから、亜表層構造の風応力への依存性が強く示唆される。また、QSCATrunによる地衡流量と風データから算出した風成駆動流量が低緯度帯ではほぼ一致することから、同緯度帯ではスベルドラップ平衡が成立することが確認できた
OFESは海洋循環と海洋構造を、海面フラックス(運動量、熱、淡水)を入力することで高解像度に再現する数値モデルである。異なる海上風データセットであるNCEPとQSCATによって駆動された2種類のOFESrun(NCEPrun及びQSCATrun)の相互比較では、表層水温がほぼ同様であるのに対して、海洋内部の亜表層(100mの深度)において、北半球では10°N付近でNCEPrunがQSCATrunよりも水温構造が約50m浅い。また、東岸からの地衡流量の鉛直積分流量も異なる(NCEPrunがQSCATrunよりも10Sv大きい)(Kutsuwada et al .,2018)。
本研究では、北半球で確認された両runの水温構造の違いや、鉛直積分流量の東岸からの積分値における違いが南半球においても同様に表れるかを検証した。また、比較としてArgo観測データから格子化されたMOAA-GPVを用いた。
2 使用データ
OFESは、NOAAによって開発されたModular Ocean Model ver.3に基づきJAMSTECによって開発された高解像準全球海洋大循環モデルである。海面フラックスデータを入力して、高い時空間解像度で海洋循環場及び海洋構造の再現を可能にした。OFESの駆動外力として、NCEP/NCARにより作成された再解析データ及び、人工衛星QSCAT(QuikACAT)の散乱計データセットを与えている。
空間解像度は水平方向には0.1°×0.1°のものを1°×1°に平均した。鉛直方向には海面(2.5m)から6065mまでで間隔が5mから330mまで変化する54層のものを秋間法(Akima, 1970)を用いて10m間隔の補間を行った。
3 解析方法
水温T(℃)、塩分S(PSS)から求めた海面力学高度偏差を用いて、海面から水深hまで鉛直積分した地衡流量を算出した。その際、無流面を2000mとした。スベルドラップ流量は海面から無流面(風成循環が及ぶ最大深度)までの鉛直積分流量に相当し、コリオリパラメーターと海面応力の東西成分によって求められるエクマン層内の流量と地衡流の鉛直積分流量の和で表される。
本研究では、海洋データから得られる地衡流量と海上風データから得られる風成駆動流量が一致するかを見る。
4 結果
水温構造は10°S付近においてNCEPrunがQSCATrunよりも約50m浅く、東西積分流量は同緯度帯でNCEPrunがQSCATrunより10Sv小さい値となった。また、MOAA-GPVとの比較では、QSCATrunの水温は200m付近まで良く一致する一方、NCEPrunは50~400mで低く、東西積分流量は、QSCATrunがMOAA-GPVにほぼ一致する。以上より、北半球と同様に南半球においてもQSCATrunはNCAPrunよりも再現性が高いと言える。
両runを駆動する風応力回転場の東西平均値の南北分布プロファイルの比較では、 10°N付近に見られる正の極大値がNCEPはQSCATよりも大きく、10°Sにおける負の極大値も同様な特性が見られる。亜表層構造の違いも10°Nと10°Sで見られることから、亜表層構造の風応力への依存性が強く示唆される。また、QSCATrunによる地衡流量と風データから算出した風成駆動流量が低緯度帯ではほぼ一致することから、同緯度帯ではスベルドラップ平衡が成立することが確認できた