日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 B (地球生命科学) » B-BC 生物地球化学

[B-BC03] 生命-水-鉱物-大気相互作用

2019年5月28日(火) 10:45 〜 12:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:掛川 武(東北大学大学院理学研究科地学専攻)、横山 正(広島大学大学院総合科学研究科)、福士 圭介(金沢大学環日本海域環境研究センター)、白石 史人(広島大学大学院理学研究科地球惑星システム学専攻)

[BBC03-P07] アルカリ塩湖に生成する含水炭酸塩鉱物の結氷条件における生成と溶解度

*北島 卓磨1松宮 春奈1福士 圭介1 (1.金沢大学)

アルカリ塩湖は、湖水中の炭酸成分を炭酸塩鉱物の形成によって固定する。湖水に含まれる炭酸成分は大気CO2由来であるため、地球表層における炭素循環においてアルカリ塩湖が重要な役割をはたしていることが注目されている(Finley et al 2015; Fukushi and Matsumiya 2018)。

自然界で一般的に認められる炭酸塩鉱物はカルシウム塩のカルサイトやアラゴナイトである。一方、塩湖環境では直接溶液から生成する炭酸塩鉱物の多くがモノハイドロカルサイト(MHC)であることが報告されている(Fukushi et al.2012)。MHCは化学式CaCO3・H2Oで表される準安定な炭酸塩鉱物の一種である(Munemoto and Fukushi, 2008)。MHCの生成には非晶質マグネシウム炭酸塩(AMC)の共存が必要であることが分かっている(Nishiyama et al., 2013; Fukushi et al., 2017)。

Fukushi and Matsumiya, (2018)では、塩湖環境を模した溶液中におけるモノハイドロカルサイト(MHC)と非晶質Mg炭酸塩(AMC)の溶解度を25℃・大気CO2分圧下で実験的に求め、自然界のアルカリ塩湖の水質がMHCとAMCの生成過程に支配されていることを明らかにした。しかし、大陸内部の乾燥寒冷地域に存在するアルカリ塩湖は冬季に結氷し、高緯度地域では一年間の半分以上が結氷している。

多くのイオンは氷結により液相に排除されるため、結氷に伴い液相にはイオン濃度の増加が生じることが予想される。したがって、湖の結氷によって鉱物生成が引き起こされる可能性は否定できない。また、結氷により大気と水溶液の隔離が生じると考えられる。すると、大気CO2分圧と平衡であった湖水は著しい低CO2分圧環境に変化することが推測される。さらに、氷が生成されるほどの低温環境は生成する鉱物種に影響を与える可能性があることに加え、その物質の溶解度、反応速度など物理化学的性質に対して大きな影響を及ぼす。したがって、25℃・大気CO2分圧下だけでは実際の塩湖環境を議論するには不十分であると考えた。そこで、本研究では二つの目的を定めた。一つは、塩湖環境を模した水溶液を用いて、溶液周囲の環境温度の変化(5~50℃)と著しく低いCO2分圧環境で沈澱生成する炭酸塩鉱物種を明らかにすること。二つ目は、生成した炭酸塩鉱物種によって支配される水質を推測するため、生成炭酸塩の溶解度を見積もることである。