日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 B (地球生命科学) » B-BG 地球生命科学・地圏生物圏相互作用

[B-BG02] 地球惑星科学と微生物生態学の接点

2019年5月28日(火) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:砂村 倫成(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、諸野 祐樹(海洋研究開発機構高知コア研究所)、濱村 奈津子(九州大学)

[BBG02-P03] 好塩性アーキアが生産する脂質コア中の“不飽和”アーキオールの詳細構造

*山内 敬明1 (1.九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)

キーワード:好塩性アーキア、アーキオール、エーテル脂質

アーキアは全て特徴的な脂質コアであるアーキオール(C20イソプレノイドジエーテル)()を持っている。さらに好塩性アーキアはC25イソプレノイドを一つ持つC25-C20ジエーテルを生産する[1]。幾つかの超好塩性アーキアでは,アーキオールとC25-C20ジエーテルおよびその不飽和体が生産され,高塩分培養条件下で不飽和化合物の割合が増加する[2]。昨年度本年会にてこのアーキオール誘導体の真の構造について,推定される4つの二重結合の位置異性体を化学的に合成し,Dawsonの提唱する構造の化合物 ではないこと,イソプレノイドの末端側に二重結合を持ったまたはであると推定した[3]。
このアーキオール誘導体の真の構造について最終決定を目論み,この不飽和ジエーテルを生産するアーキアHaloferax sulfrifonisの培養と脂質抽出で得たコア脂質の分析を行い,そのトリメチルシリル(TMS)エーテル誘導体のマススペクトルを比較した。
微生物脂質コア分析試料からは,Dawsonの不飽和ジエーテルの分析で不飽和結合が一つとされると目される化合物は存在したが,それの質量分析の結果は合成化合物のに類似した質量分析スペクトルを示し,さらに,もう少し飽和ジエーテルに近い保持時間を持つ位置にに非常に近いマススペクトルを示す化合物が存在した。つまりDawsonの文献で示される二つの二重結合を持った不飽和化合物と目されるものが実はであること,一方も存在することもわかった。これは二重結合の位置異性体が異なるものが存在し,この不飽和結合の存在はヒドロキシアーキオール合成にも,またC40テトラエーテル形成に関わるものも生合成している,ないしはこの二重結合は後成的に,あまり特異的でなく生成している可能性もある。C20-C25不飽和ジエーテルを作るとされるアーキアのコア脂質も分析し,その結果についても報告予定である。
[1]De Rosa et al., J. Gen. Microbiol., 128, 343 (1982).
[2] Dawson et al. Org. Geochem., 48, 1 (2012).
[3] Yamauchi (2018) JpGU meeting 2018 BBG03-P08.