日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 B (地球生命科学) » B-CG 地球生命科学複合領域・一般

[B-CG06] 地球惑星科学 生命圏フロンティアセッション

2019年5月28日(火) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:高野 淑識(海洋研究開発機構)、鈴木 庸平(東京大学大学院理学系研究科)、加藤 真悟(国立研究開発法人理化学研究所)、福士 圭介(金沢大学環日本海域環境研究センター)

[BCG06-P06] 微小生命活動の現場を視る-X線マイクロ/ナノCTによる微生物細胞可視化の試み

*諸野 祐樹1浦本 豪一郎2,1上杉 健太朗3竹内 晃久3上椙 真之3久保田 健吾4星野 辰彦1稲垣 史生1 (1.海洋研究開発機構、2.高知大学、3.高輝度光科学研究センター、4.東北大学)

キーワード:X線CT、海底下生命圏

環境中に存在する微生物とその生息環境を精細かつ立体的に可視化することが出来れば、自然界で起こる様々な微生物反応の「場」の観察が可能となり、微生物細胞の局在とミクロ、マクロ生育環境との関わり、微小な生命現象の本質的理解へとつながることが期待される。近年、X線を利用したCT(Computed Tomography:コンピュータ断層撮影)技術の進歩により、その空間分解能はサブマイクロメートル領域に到達し、微生物レベルの極小物質の分布を可視化することも可能になってきている。しかし、主に軽元素で構成される微生物細胞は、X線を容易に透過するために種々の元素が存在する環境試料中で明確なコントラストをもって可視化をすることは出来なかった。本研究では、重元素を用いた種々の染色を施し、環境試料中に存在する微生物細胞を超高空間分解能X線μCTで可視化することを試みた。
 可視化対象の試料としては、海底下堆積物試料、及び嫌気性グラニュール汚泥を用い、X線μCT解析は大型放射光施設(SPring-8)のBL20XUおよびBL47XUにおいて実施した。実際に微生物を含む海底下堆積物試料について計測を行ったところ、高い空間分解能で測定を実施した場合では測定中の試料変形などによりイメージの取得が困難な場合があったものの、電子顕微鏡観察用の樹脂に包埋する(例えばUramoto et al.)などの処理を施した試料を用いて測定を行い、かつオスミウムなどによる染色により微生物細胞に重元素を付加することによって個々の細胞を立体的に可視化することが可能となった。また、さらに、X線吸収係数が急激に変化する吸収端前後のエネルギーで測定したCT画像の演算処理を行うことで、特定元素によって染色された微生物細胞を可視化することが可能であることも示唆された。
 微生物が生育する環境では微生物自身が行う代謝反応により様々な化学グラジエントが形成され、環境に応じた微生物群の住み分けが起こっている。この技術をさらに発展させることにより、これまでは二次元的な観察が行われてきた環境微生物分布の解析を立体化し、様々な環境における「微生物目線での理解」を促進することが期待される。