日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 B (地球生命科学) » B-CG 地球生命科学複合領域・一般

[B-CG08] 顕生代生物多様性の変遷:絶滅と多様化

2019年5月28日(火) 13:45 〜 15:15 105 (1F)

コンビーナ:磯崎 行雄(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻広域システム科学系)、澤木 佑介(東京大学大学院総合文化研究科)、座長:藤崎 渉(国立研究開発法人海洋研究開発機構)

14:00 〜 14:15

[BCG08-06] 最下部カンブリア系SSF生層序の改訂

*河野 聖那1磯崎 行雄1佐藤 友彦2張 興亮3劉 偉3 (1.東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻広域システム科学系、2.東京工業大学地球生命研究所 、3.中国西北大学)

キーワード:カンブリア紀、SSF、雲南省

カンブリア紀最初期の動物多様化はsmall shelly fossils (SSF)群集の出現として記録されている.これまで最も詳しい研究が行われてきた南中国,雲南省東部澄江地域の小濫田および洪家冲セクションの露頭試料および掘削コア試料を用いて,最下部カンブリア系の詳細な岩相およびSSF生層序を検討した. 小濫田セクションにおける最下部カンブリア系の中で,SSFを含有するリン酸塩岩(中誼村部層:層厚約30 m)について詳細な検討を行った結果,以下の事が明らかになった.1)中誼村部層は岩相の特徴から6つのユニットに細分される.黒色泥岩層を伴うユニット3は中誼村部層の中で明瞭な鍵層となる.2) 中誼村部層および直上の大海部層から採取した83層準の試料中,26層準からSSFが得られ,多様なSSF化石の産出範囲の詳細が明らかになった.下位より順に(i) Acanthocasis orthocanthus, Spirellussp., Protohertzina unguloformis, Protohertzina anabaricaを主に産する区間(中誼村部層ユニット1の最上部およびユニット2の下部).(ii) Ocruranus finial, Purellasp., Yunnanopleura biformisを含み(ユニット2の上部), cap状化石の初出によって特徴付けられる区間.(iii) Helcionellasp., Oelandiella korobkoviからなる区間(ユニット3).(iv) Obtusoconussp.,Conopoconissp., Erongia acculatusを含む区間( ユニット6の下部).そして(v) Igorella sp., Bemella simplelx, Paragloborilus subglobosusからなる区間(ユニット6の上部)である.3) 洪家冲セクションでは(i)と(ii)の間にHalkieriasp., Pteromus sp., Sinosachites delicatusなどからなる特異な群集を産する区間がさらに識別可能である.

以上のことから,小濫田および洪家冲セクションでは,以下の6つの化石帯が設定できる.すなわち,Acanthocasis orthocanthus- Protohertzina anabaricaZone, Halkieria- PteromusZone,Ocruranus finial-Yunnanopleura biformisZone,Paracarinachites sinensis-Oelandiella korobkoviZone,Obtusoconus-ConopoconisZoneそしてIgorella-Bemella simplelxZoneである.中誼村部層のSSFについてはこれまで2つの群集帯が区分された(Steiner et al., 2007)のみであったが,本研究によって6つの化石帯が識別可能であることが明らかとなった.また,中誼村部層中部の鍵層がParacarinachites sinensis-Oelandiella korobkovizoneに限定されることは,広域の年代対比に極めて有効である.