日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 B (地球生命科学) » B-CG 地球生命科学複合領域・一般

[B-CG08] 顕生代生物多様性の変遷:絶滅と多様化

2019年5月28日(火) 13:45 〜 15:15 105 (1F)

コンビーナ:磯崎 行雄(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻広域システム科学系)、澤木 佑介(東京大学大学院総合文化研究科)、座長:藤崎 渉(国立研究開発法人海洋研究開発機構)

14:45 〜 15:00

[BCG08-09] 白亜紀―古第三紀境界粘土層における親銅元素の異常濃縮

*丸岡 照幸1西尾 嘉朗2 (1.筑波大学 生命環境系、2.高知大学 農林海洋科学部 )

キーワード:隕石衝突、衝突加熱、酸性雨

白亜紀-古第三紀(K-Pg)境界に相当する時代に隕石衝突が起こったことは様々な地球科学的証拠から示されているが,隕石衝突後の地球の環境変化を含めて大量絶滅を引き起こした直接的な要因については明確になっていない。K-Pg境界は、Ir、Osなどの親鉄元素の異常濃縮で特徴づけられるが、Cu、Zn、Asなどの親銅元素にも異常濃縮が見出されている。親鉄元素の元素比はコンドライトと同様の比であり、この親鉄元素は衝突した隕石に起因することが分かっている。一方で、親銅元素/親鉄元素の比は1-2桁程度コンドライトにおける比よりも高くなっている。このために親銅元素は隕石成分だけでは説明がつかない。本研究ではK-Pg境界粘土層に含まれる主要・微量元素組成をもとに、親銅元素過剰を生み出すメカニズムを議論する。

K-Pg境界粘土層の主要・微量元素濃度は近接する露頭から得られた試料でさえも一定ではなく、いくつかの元素濃度間に相関関係を見出すことができた。この相関は2成分の混合で説明可能である。一方は親銅元素・Feに富んだ成分で、他方はCaに富んだ成分であった。Ag, Cu, Pb, Irに関してはこの2成分以外にさらに1成分が必要であった。K-Pg境界粘土層に含まれる親銅元素は、鉄に富む成分、Ag, Cu, Pbに富む成分として存在している。

境界粘土層は鉄酸化物/水酸化物の微粒子に富んでいることがあり、このような粒子は隕石衝突に伴う衝撃加熱で生じた凝縮物だと考えられている。鉄酸化物/水酸化物は貧酸素な海洋底に到達すると還元され、硫化物として堆積物に固定される。鉄酸化物/水酸化物は海水中の親銅元素を捕集することが知られており、捕集されていた親銅元素は硫化物に取り込まれる。Feに伴われる親銅元素はこのようなプロセスを経て、境界粘土層に濃縮したと考えられる。一方、Ag, Cu, Pbは閃亜鉛鉱や方鉛鉱などの酸可溶硫化鉱物に濃縮しやすい元素であるため、隕石衝突直後に起きた酸性雨により溶解し、海洋に流入した成分であると考えられる。これらの親銅元素に富む2成分は衝突加熱、酸性雨といった隕石衝突に関連する事象により生じたことになる。