日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS04] 大気化学

2019年5月30日(木) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:中山 智喜(長崎大学 大学院水産・環境科学総合研究科)、岩本 洋子(広島大学 生物圏科学研究科)、豊田 栄(東京工業大学物質理工学院)、江口 菜穂(Kyushu University)

[AAS04-P01] ひまわり8号データを用いたGOSAT衛星の雲判定精度の検証

*北村 克樹1齋藤 尚子2 (1.千葉大学大学院融合理工学府地球環境科学専攻、2.千葉大学環境リモートセンシング研究センター)

キーワード:GOSAT、ひまわり8号、雲判定、検証

GOSAT(Greenhouse Gases Observing SATellite)搭載のTANSO(Thermal and Near−infrared Sensor for Carbon Observation)−FTS(Fourier Transform Spectrometer)の観測スペクトルから温室効果ガス濃度を導出する際、昼間はTANSO−CAI(Cloud and Aerosol Imager)、夜間はTANSO−FTSの熱赤外バンド(TIRバンド)を用いて、FTS観測視野内の雲判定を行っている。本研究では、静止気象衛星ひまわり8号搭載のAHI(Advanced Himawari Imager)のデ−タを用いて、TANSO−FTSの観測視野内の雲判定の検証を行った。

まず、2016年1月と7月の海上のTANSO−FTSの観測について、TANSO−FTSとの観測時刻差が1分以内であり、かつTANSO−FTSの観測視野内にその観測グリッドの中心が存在しているすべてのひまわり8号の観測グリッドを抽出した。次に、各グリッドについて、ひまわり8号/AHIの反射率と輝度温度に基づいて雲判定を実施し、各雲判定結果を統合してTANSO−FTSの観測視野におけるひまわり8号の雲判定結果とした。

 昼間のTANSO−CAIとひまわり8号による雲判定の一致率は高い割合(約9割)を示した。約1割のTANSO−FTSの観測地点において、両者の雲判定が一致しなかった主な原因は、TANSO−CAIでは可視域の反射率のみを利用して雲判定を行っていることに対して、ひまわり8号では可視域の反射率と赤外域の輝度温度の両方を利用して雲判定を行っているためであると考えられる。一方、TANSO−FTSのTIRバンドとひまわり8号による雲判定の一致率は、TANSO−CAIとひまわり8号による雲判定の一致率より約13−20%低くなった。この一致率が悪くなる原因として、TANSO−FTSの観測視野(10.5 km)がTANSO−CAI及びひまわり8号の観測視野(0.5 km及び2 km)より広いこと、またTANSO−FTSのTIRバンドの雲判定は赤外域の輝度温度のみを用いて雲判定を行っていることが挙げられる。

さらに、GOSATによる雲判定(TANSO−CAI及びTANSO−FTSのTIRバンド)とひまわり8号による雲判定が一致しないケースについての詳細を調べた。まず、GOSATが晴れと判定しひまわり8号か曇りと判定したケースの方が大幅に多いことから、本研究のひまわり8号による雲判定が晴れに対して厳しい判定をするアルゴリズムになっていることが結果に影響していると考えられる。また、TANSO−FTSのTIRバンドが晴れと判定しひまわり8号が曇りと判定している観測地点では、TANSO−FTSの観測視野で部分的に輝度温度が低くなっているケースが複数見られたことから、TANSO−FTSの観測視野がひまわり8号の観測視野より広いため、TANSO−FTSの観測視野内の部分的な雲をTIRバンドによる雲判定では見逃している可能性があることが示唆される。