日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS04] 大気化学

2019年5月30日(木) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:中山 智喜(長崎大学 大学院水産・環境科学総合研究科)、岩本 洋子(広島大学 生物圏科学研究科)、豊田 栄(東京工業大学物質理工学院)、江口 菜穂(Kyushu University)

[AAS04-P02] 日本森林で産するキノコ胞子の氷晶核化温度測定

*北 和之1佐々木 完斉1南 光太郎1木名瀬 健2足立 光司2財前 祐二2保坂 健太郎3牧 輝弥4五十嵐 康人1,5 (1.茨城大学、2.気象研究所、3.国立科学博物館、4.金沢大学、5.京都大学)

キーワード:バイオエアロゾル、キノコ胞子、氷晶核

エアロゾルは上空で雲粒形成の際の凝結核・氷晶核として働く。近年、バイオエアロゾルの中に、-15℃以上と比較的高い温度で氷晶核となるものが発見され、比較的高温(低い高度)での氷晶雲・降水の発生を説明できるのではないかということで、注目されている。一般的なエアロゾルについて氷晶核能を測定した研究は数多く存在するが、多くの種類のキノコ胞子について氷晶核能を測定した研究はほとんどなく、どのような種類のキノコ胞子が比較的高温で氷晶核化するかなどまだ理解できていない。本研究では、日本の森林で発生する様々な種類のキノコ胞子について、氷晶核能の測定を行い、生物学的な分類との関係を調べた。また、氷晶の発生形態についても分類し、氷晶発生温度やプロセスに関する知見が得られないか調べた。

本研究では、主に筑波実験植物園内各種の林内で5月~10月に毎月実施されたキノコ調査で採取したキノコから胞子を捕集し、クールステージを取り付けた光学顕微鏡を用いて氷晶核化温度の測定と氷晶の発生形態の観察を行う実験を行った。また、福島県浪江町の森林で採取したキノコについても同様の実験を行った。

その結果、キノコ胞子の氷晶核化温度は種によって大きく異なり、数種類のキノコ胞子で代表させることはできないことが分かった。氷晶核化温度と生物学的分類との関係についてみると、ハラタケ目には氷晶核化温度は-15℃程度と-30℃程度の2つのグループが存在した。ベニタケ目は大きなばらつきが存在するが-20~-30℃程度、イグチ目は-30℃程度、タマチョレイタケ目は-22℃で氷晶核となった。また、氷晶の発生形態により「A:胞子が膨らんでから胞子全体から氷が成長するもの」、「B:突然胞子全体から氷が成長するもの」、「C:胞子の一部から氷が成長するもの」、「D:胞子の周りに氷が発生するもの」の4種類に分類した。例外は存在するが、Aに分類できた胞子の多くは-15℃以上と比較的高い温度で氷晶核となった。他の発生形態については氷晶核化温度との関係は明確ではない。

本研究により、様々な種のキノコ胞子の氷晶核化温度が測定され、-15℃程度の比較的高温で氷晶核化できるものがあることが分かった。比較的高温で氷晶となるキノコ胞子は、ハラタケ目に分類されるものが多く、「胞子が膨らんでから胞子全体から氷が成長する」形態をとることわかり、どういう(成分、構造など)胞子が、高温で氷晶核化するか理解するヒントになると思われる。キノコ胞子が本当に雲生成に寄与しているかを明らかにするためには、さらにキノコ胞子の上空への輸送効率や上空の環境条件で氷晶核化するかどうかを明らかにする必要がある。