日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS04] 大気化学

2019年5月30日(木) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:中山 智喜(長崎大学 大学院水産・環境科学総合研究科)、岩本 洋子(広島大学 生物圏科学研究科)、豊田 栄(東京工業大学物質理工学院)、江口 菜穂(Kyushu University)

[AAS04-P09] 長崎県雲仙岳周辺での小型センサを用いたPM2.5の高度依存性の観測

*中山 智喜1上野 彩音1鐘ヶ江 健太1河本 和明1馬越 孝道1山崎 高幸2岡本 渉2松見 豊2 (1.長崎大学 環境科学部、2.名古屋大学 宇宙地球環境研究所)

キーワード:PM2.5、越境汚染、小型センサー、山岳

PM2.5等のエアロゾル粒子は、太陽光を光吸収もしくは光散乱したり、雲凝結核として雲粒生成に関与したりすることで、放射収支を変化させ、直接もしくは間接的に気候変動に影響を及ぼしている。また、人間の体内に取り込まれると、呼吸器および循環器の疾患を引き起こすなど、その健康影響が懸念されている。日本においてPM2.5の起源として、国内の排出源の影響に加えて、アジア大陸からの越境輸送の寄与が考えられる。特に、長崎県などの九州西北部においては、冬季から春季に高濃度のPM2.5を含む越境輸送気塊が頻繁に到達することが知られている。PM2.5の重量濃度の測定は、環境省の常時監視局(そらまめ君)などで行われているが、人口の少ない山岳部での観測点は極めて限られている。また、大型で高価なベータ線吸収法を用いた装置を、多点観測に用いるのは難しい。我々は、最近、パナソニック株式会社と共同で個々の粒子の光散乱強度を計測することでPM2.5の重量濃度が計測可能な小型PM2.5センサを開発した[Nakayama et al. 2018]。
本研究では、長崎県の雲仙岳周辺で本センサを用いたPM2.5重量濃度の観測を実施して、高度方向および東西方向の広がりおよび、その時間変動について解析した。2018年12月以降、標高20 mから1300 mの6地点に小型PM2.5センサを設置し、1分程度の時間分解能で測定している。これまでの観測により、冬季に35 µg/m3以上の高濃度PM2.5が観測された際には、地上付近と高度1 km以上で概ね同程度のPM2.5の重量濃度となる場合が多い一方、上空から清浄な気塊が流入したり、安定な境界層内に粒子が滞留したりすることで、地上付近でのみ高濃度PM2.5が観測された事例も見られた。今後、雲仙岳から北西38 kmに設置されている国立環境研究所のライダー観測データとの比較を進める予定である。

謝辞
本観測は、雲仙市、島原市、南島原市、雲仙ロープウェイ株式会社、およびパナソニック株式会社エコソリューションズ社の協力を得て実施している。
文献
T. Nakayama, Y. Matsumi, K. Kawahito, Y. Watabe, Development and evaluation of a palm-sized optical PM2.5 sensor, Aerosol Sci. Technol., 52, 2-12, doi:10.1080/02786826.2017.1375078 (2018).