日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS04] 大気化学

2019年5月30日(木) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:中山 智喜(長崎大学 大学院水産・環境科学総合研究科)、岩本 洋子(広島大学 生物圏科学研究科)、豊田 栄(東京工業大学物質理工学院)、江口 菜穂(Kyushu University)

[AAS04-P11] 大気中金属粒子のICP-MS観測とTEMによる個別粒子解析

*木名瀬 健1足立 光司1梶野 瑞王1林 政彦2原 圭一郎2 (1.気象研究所、2.福岡大学)

キーワード:酸化能、金属粒子、ICP-MS、透過型電子顕微鏡、形態観察

大気中には金属成分を主体としたエアロゾル(以下、金属粒子)が多く存在する。これら金属粒子の中には特に強い酸化能を示すものが存在し、人体内部に沈着し、健康影響を及ぼすことが分かってきている。それらは細胞表面または細胞中にて活性酸素やラジカルを形成し、酸化ストレスを与え、細胞死やDNAの損傷を引き起こす。しかし、それぞれの金属粒子がどの程度の酸化能を有し、どの程度人体に影響を及ぼすかはまだあまりよくわかっていない。また、酸化鉄などの有色金属粒子は太陽放射を吸収し、温暖化に寄与することが示唆されている。しかしその各地点における存在量や詳細な性状については明らかにされていない。

本研究では、誘導結合プラズマ質量分析計(以下ICP-MS)により大気中の金属濃度を連続測定し、同時にインパクターでグリッド上に採取したエアロゾルサンプルの透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型透過電子顕微鏡(STEM)、エネルギー分散型X線分光法(EDS)による観察を実施した。使用したICP-MSにはガス交換機を接続しており、エアロゾルがアルゴンガス雰囲気下に置換することで、エアロゾルを直接ICP-MSに導入し、リアルタイムでの測定が可能となっている。これにより大気中金属粒子濃度の時系列変動を定量的に把握し、期間中の各種金属の増減イベントごとに観察される金属粒子の形態・組成をTEMおよびEDS-STEM分析により明らかにする。また、大気中を浮遊する金属粒子の特徴や、その混合状態についても知見を得ることを目的としている。

本観測は冬季(2018/1/17~2/8)と春季(2018/5/8~5/30)の二期間に福岡大学にて集中観測として実施した。観測の結果、両期間ともICP-MSにより複数回のイベントをとらえることができた。最も質量濃度が高い成分はFeやAlで、次いでZn、Mn、Cr、Pbが多く存在しており、増減の挙動も比較的一致していた。またMn、V、AlとFeの相関を取ると、二つの傾きが存在することが分かった。Feと挙動が一致しない成分としてはAg、Au、Mo、Tcなどがあった。ICP-MSで金属の高濃度イベントを検出した時間帯のサンプルについてTEMで観察すると、金属主体の微小な球形粒子(小さいものでは数nm)の凝集体を見つけることができた。その主たる粒子はFe、Mn、Crなどを含む粒子で、ほとんどの粒子は硫酸塩と内部混合していた。また、一つの粒子の中に複数個の細かい金属粒子が散乱して内部混合しているケースも見られた。ZnやPbを主に含む金属粒子も硫酸塩に内部混合しているが、粒子ではなく溶存体として存在するか、あるいは電子線により分解する結晶状態として観察された。

主要な金属成分以外にも、Ag、Sb、Cuなどを多く含む金属粒子も確認することができた。本研究で得られたデータは、大気中の金属粒子の挙動を理解するうえで有用となる。