日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CC 雪氷学・寒冷環境

[A-CC26] アイスコアと古環境モデリング

2019年5月28日(火) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:植村 立(琉球大学 理学部)、川村 賢二(情報・システム研究機構 国立極地研究所)、阿部 彩子(東京大学大気海洋研究所)、竹内 望(千葉大学)

[ACC26-P09] ダンスガード・オシュガー振動に関連する分岐メカニズムとそれに付随する動力学的特性について

*三ツ井 孝仁1阿部 彩子1陳 永利1シェリフ多田野 サム1 (1.東京大学)

キーワード:ダンスガード・オシュガーサイクル、分岐、振動

ダンスガード・オシュガー振動(以下,DO振動)は氷期における千年スケールの急激な気候変動である(Dansgaard et al. 1993; Johnsen et al. 1992).取り分け氷期中期に頻度が高く,氷期初期や氷期最盛期では頻度が低い(McManus et al. 1999; Kawamura et al. 2017).発見以来,DO振動に関する多くの研究がなされているが,その詳細なメカニズムは議論中である.最近,大気海洋結合モデルMIROC4m (Hasumi and Emori 2004)を用いた研究で,DO振動に似た千年規模振動がシミュレートされ,DO振動が大気海洋の相互作用による自励的振動である可能性を示唆された(Abe-Ouchi et al. in prep).また,この自励的振動は氷床・地球軌道要素・温室効果ガスなどの背景気候条件がある範囲にある時に発生し易く,氷期中期にDO振動が顕著であるという観測とコンシステントである(Abe-Ouchi et al. in prep; Sam Sherriff-Tadano et al. 2017).

外部パラメータの変化に対するダイナミカルシステムの振る舞いの変化の研究は分岐理論と呼ばれる.一般には無数に多くの個別的ダイナミカルシステムが考えられるにも関わらず,分岐現象の多くはいくつかのタイプに分類される(例えば, ストロガッツ, 非線形ダイナミクスとカオス, 2015).分岐のタイプを特定することは,振動発生の動力学的メカニズムや振動周期・振幅などの特性の理解に手がかりを与える.例えば,ホモクリニック分岐と呼ばれる分岐の場合には,一般に,分岐点近傍で振動周期が無限大に発散する特性を持つ.一方,ホップ分岐と呼ばれる分岐の場合には,このような周期の発散は起こらず,周期は有限に留まる.過去の一部の研究[7, 9]では,このような振動周期の変化に基づいて,分岐メカニズムの推定が行われて来た.

本研究では,過去に提案されたDO振動のモデル[1-12]における分岐メカニズムについて調査した.また,MIROC AOGCMに類似したパラメータ依存性を持つWinton (1993)の3ボックスモデル[2]についてはオリジナルの分岐解析を行った.その結果,多くのモデルで,ホップ分岐[1,2,4,5,6,7,10,11]とホモクリニック分岐[1,2,3,5,6,7,8,9,11]のどちらか,または両方を介して振動が発生することが分かった.また,Welander (1982) [1]と拡張されたWintonのモデルでは,振動発生にホップ分岐とホモクリニック分岐を介する場合があるが,両者の分岐はあるパラメータ極限で一致することを述べる(cf. [11]).このことは分岐メカニズムがホップ分岐でも分岐点近傍で周期が伸び得ることを示している.つまり,しばしば行われる振動周期のパラメータ依存性に基づく分岐メカニズムの推定は極めて微妙な問題をはらんでいる.Winton (1993)のモデルでは,振動発生がホップ分岐介する場合でも,モデルはホモクリニック軌道に似た相空間構造を持っており,この構造を反映して分岐点近傍で振動周期が長くなる.MIROC AOGCMにおいても,ホップ分岐かホモクリニック分岐,(またはその両方)に関連して振動が発生していると予想される.非常に高い計算コストと潜在する自然変動のため,現時点でどちらの分岐かは決定できないが,分岐点近傍の軌道はホモクリニック軌道と似た特徴を持っており,周期が長い.

[1] Welander, Dyn. Atmos. Oceans (1982)
[2] Winton, Ice in the Climate System. NATO ASI Series (1993)
[3] Cessi, Journal of Physical Oceanography (1996)
[4] Sakai and Peltier, J. Climate (1999)
[5] Timmermann, Schulz, Gildor, and Tzipermann J. Climate (2003)
[6] Abshagen and Timmermann, Journal of Physical Oceanography (2004)
[7] Colin de Verdière, Ben Jelloul, and Sévellec, J. Climate (2006)
[8] Colin de Verdière, Journal of Physical Oceanography (2007)
[9] Sévellec, Huck, and Colin de Verdière, J. Mar. Res (2010)
[10] Roberts and Saha, Clim. Dyn. (2017)
[11] Leifeld, Euro. Jnl. of Applied Mathematics (2018)
[12] W. R. Peltier and G. Vettoretti, GRL (2014)