日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG38] 熱帯インド洋・太平洋におけるマルチスケール大気海洋相互作用

2019年5月28日(火) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:清木 亜矢子(海洋研究開発機構)、東塚 知己(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、名倉 元樹((独) 海洋研究開発機構)、釜江 陽一(筑波大学生命環境系)

[ACG38-P05] フィリピン海における大気海洋変動とエルニーニョ変調の関係

*長谷川 拓也1永野 憲2植木 巌2安藤 健太郎2 (1.東北大学、2.海洋研究開発機構)

キーワード:エルニーニョ、フィリピン海、western Pacific Oscillator model

El Nino理論の一つであるWestern Pacific Oscillator (WPO) モデルの特徴の一つに、エルニーニョ最盛期以後に西部熱帯太平洋(フィリピン海周辺海域)において高気圧偏差が卓越する点が挙げられる。この特徴に着目して、エルニーニョ発生後の冬季(1-3 月)に平均されたフィリピン海の高気圧偏差の時系列を作成した。その結果、eastern-Pacific(EP)-El Nino (1982/83, 1986/87, 1991/92, 1997/98 年)では、 WPO モデルの特徴と一致して、海面気圧は強い正偏差を示す。一方、central-Pacific (CP)-El Nino (1994/95, 2002/03, 2004/05、2006/07、2009/10 年)では、高気圧偏差の値が弱い。次に、海面気圧と海上風の水平分布を調べるために、EP-El Nino 及び CP-El Nino の各イベント毎に、エルニーニョ発生後の冬季において海面気圧偏差と海上風偏差の平均図を作成した。その結果、EP-El Nino では先の結果と一致して、フィリピン海周辺において正の海面気圧偏差が出現し、それに対応する高気圧性の海上風循環場が見られた。この高気圧性循環場の南部(5N 付近)では、東風偏差となっており、赤道太平洋の暖水を減少さ せる極向きのエクマン輸送が導かれる。これは WPOモデルから期待されるように、現在のエルニーニョを終焉させ次のラニーニャを導く cold 赤道ケルビン波の発生に好ましい状況であることを示唆する。さらに、海面高度 偏差の合成図解析を行った結果、EP-El Nino では cold 赤道ケルビン波の発生に好ましい大きな負の海面高度偏差が西部赤道太平洋に分布していた。一方、CP-El Nino では、高気圧性偏差が非常に弱く、海上風は明瞭な高気 圧性の循環場を形成しておらず、西部赤道太平洋には大 きな負の海面高度偏差は見られない。これらの結果から、CP-El Nino では、WPOモデルの特徴が弱く、この WPOモデルが効果的に機能していないことが示唆される。


[謝辞] 本研究は、JSPS科研費・基盤研究(C)・17K05660の助成を受けたものです。