日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-HW 水文・陸水・地下水学・水環境

[A-HW23] 水循環・水環境

2019年5月29日(水) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:町田 功(産業技術総合研究所地質調査総合センター)、山崎 大(東京大学生産技術研究所)、林 武司(秋田大学教育文化学部)、福士 圭介(金沢大学環日本海域環境研究センター)

[AHW23-P13] 熊本市江津湖における湧水量の再考察

*一柳 錦平1井手 淨1嶋田 純1市川 勉2 (1.熊本大学、2.東海大学)

キーワード:湧水、江津湖、長期変化、季節変動

熊本地域は水道水源の100%を地下水で賄っているが,近年は地下水位の低下が懸念されている.熊本市の江津湖周辺では,湧水量を観測するために1991年12月より毎月,13地点で流量測定が行われている.これまでの研究では,最下流の秋津橋の流量から最上流の鵜渡橋および流入河川の流量を引いて,江津湖全体の湧水量を求めていた.しかし,上江津湖上流や下江津湖上流の斉藤橋では,流量の経年変化に顕著な減少傾向は認められない.また,下江津湖では2003年以降,上流の斉藤橋よりも下流の秋津橋の方が流量の少ない期間が多くあり,湖水が地下へ浸透していると考えられている.そのため,最下流の秋津橋の流量を使って江津湖全体での湧水量を計算すると,下江津湖での浸透量を過小評価している可能性が考えられる.そこで本研究では,上江津湖より上流域,上江津湖,下江津湖の3つのゾーンに区切って各湧水量を求め,それらの合計値を江津湖全体の湧水量とした.期間は1991年12月より2014年12月までである.流量データのある13地点のうち,欠測率が5%未満の7地点を利用し,1ヶ所でもデータが無い場合は欠測とした.ただし,各ゾーンの湧水量がマイナスになる場合,マイナスのまま計算した場合(ケース1)と,湧水量を0m/日として計算した場合(ケース2)について比較した.その結果,江津湖全体の湧水量は1992年の約450,000m3/日から徐々に少なくなって,2005年には約360,000m3/日(ケース1),約410,000m3/日(ケース2)となった.その後,2006年7月以降は降水量の急激な増加に伴って湧水量も増加し,2015年まで400,000~500,000m3/日程度を維持している.このように,ケース1とケース2で経年変化に大きな違いは認められなかった.また,上江津湖より上流域と上江津湖では湧水量がプラスの期間が多く,ケース1とケース2の差はほとんど無かった.しかし,下江津湖では2003年以降たびたび湧水量がマイナスになり,2006年7月以降の平均値はケース1よりもケース2の方が約90,000m3/日多かった.さらに,各ゾーンの季節変化を比較するため,月平均値を計算した.その結果,江津湖全体の湧水量は4-5月に低く,10-11月に高い.しかし,上江津湖より上流域と下江津湖の湧水量は季節変動が小さく,上江津湖だけが江津湖全体と同様の季節変動を示した.また,下江津湖の湧水量がマイナスになるのはとくに8月が多く,2006年以降の8月の平均値はケース1では約-14,000m3/日,ケース2では約32,000 m3/日となった.月平均値が負になるのはおかしいので,湧水量の季節変化はケース2の方が適切に表現していると考えられる.