日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-HW 水文・陸水・地下水学・水環境

[A-HW24] 同位体水文学 2019

2019年5月27日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:安原 正也(立正大学地球環境科学部)、風早 康平(産業技術総合研究所活断層・火山研究部門)、大沢 信二(京都大学大学院理学研究科附属地球熱学研究施設(別府))、浅井 和由(株式会社 地球科学研究所)

[AHW24-P08] 222Rn濃度を用いた増富温泉水の形成機構に関する水質化学的検討

*望月 映希1早川 拓哉1小林 浩1 (1.山梨県衛生環境研究所)

キーワード:温泉、増富温泉、山梨県、ラドン222、形成機構

山梨県北部の増富温泉の222Rn含有量は全国屈指で、温泉保養地として多くの利用者が訪れている。この温泉を長期的、計画的に使用するために、現在の湧出状況や湧出機構を明らかにすることは重要である。
増富温泉では、地表近くに存在する沈澱岩が222Rn源になっていることが報告されており、222Rn濃度と222Rnを除く他の温泉成分(以下「温泉成分」)濃度の挙動は異なると考えられる。そこで、222Rn濃度と温泉成分濃度を元に温泉水の形成機構の推定を試みた。
本研究では、増富温泉地内の丹生沢(にゅうざわ)源泉を平成28年4月から平成30年3月の2年間定期的にモニタリングを実施し、この源泉に含まれる222Rn濃度と温泉成分濃度、湧出量、泉温を観測した。その結果、222Rn濃度は3,700~7,800Bq/kgの範囲で周期的な変動が観測されたが、温泉成分濃度、湧出量及び泉温は、平成29年10月及び平成30年3月の温泉成分濃度の特異的低下を除き、ほぼ一定であった。
温泉成分濃度の特異的低下の認められた平成29年10月及び平成30年3月は、いずれも222Rn濃度の周期的変動が極小を示した時期と一致していた。いずれもモニタリング直前にまとまった降水が観測されており、これが222Rn及び温泉成分濃度低下に関与していると考えられた。このことから、222Rn濃度の変動及び温泉成分濃度の特異的低下と降水の関連性に注目して解析した。
降水により地表に水が供給されると222Rn濃度が低下し、その後4か月ほどかけて緩やかに回復した。温泉成分濃度は、特異的な低下を除き降水の多寡によらず一定であった。
このことを説明するため以下の仮説を立てた。沈澱岩から生じた222Rnは、土中222Rnガスとなり、この222Rnガスが温泉水中の222Rn源の一つとなっている。通常、浅層地下水は、温泉水と交わらないが、浅層地下水がその量に応じて222Rnガスを奪うことで、温泉水中の222Rn濃度が変動している。
この仮説を検証するため、降水を元に推定した浅層地下水量と222Rn濃度の関係を確認したところ、有意な負の相関が認められ、仮説を支持する結果が得られた。
これらのことから、丹生沢源泉において、222Rn濃度と温泉成分濃度、降水を元に温泉水の形成機構を説明することができた。