[AOS20-P03] 北太平洋メラネシア海盆の底層水におけるフロン類の最初の検出
キーワード:気象庁東経165度線、メラネシア海盆、フロン類、底層水
フロン類は、人工的に合成され、もともと自然界には存在しなかった化学物質である。海水中のフロン濃度は、多くの水塊の形成率の評価や、形成域で沈み込んでからの経過時間の分布の解明に利用されてきた。また、底層のフロン類の観測は、底層水の移流・拡散経路の解明に有効である。気象庁は、2018年8月6日–9月27日に「凌風丸」で東経165度に沿ったWOCE(World Ocean Circulation Experiment)-P13測線のGO-SHIP(Global Ocean Ship-based Hydrographic Investigation Program)再観測を行った。この観測においては、CFC-11、-12、-113の測定も行い、17°N–3°Sのメラネシア海盆内の底層付近において、検出下限(0.006±0.0011 pmol/kg)を超えるCFC-11の検出に初めて成功した。この結果は、南大洋で沈み込んだ下部周極底層水が、サモア水路を通り、赤道を越えて北太平洋のメラネシア海盆に到達したことを示している。南太平洋におけるWOCEとGO-SHIPの高精度の歴史的データと合わせて見積った海底付近のCFC-11の移流速度は、約1 cm/sec (315km/年)であった。この結果と気象研究所のCMIP6/OMIP数値モデリングの結果は、良く対応している。今回得られた結果は、太平洋の熱塩循環の理解と、地球温暖化の将来予測のための地球システムモデルの検証や高度化に貢献する。