日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 B (地球生命科学) » B-PT 古生物学・古生態学

[B-PT05] 地球生命史

2019年5月30日(木) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:本山 功(山形大学理学部地球環境学科)、生形 貴男(京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻)、守屋 和佳(早稲田大学 教育・総合科学学術院 地球科学専修)

[BPT05-P02] 沖縄本島南部に分布する港川層から産する中期更新世サンゴ化石を用いた古環境復元

*戸松 里帆1Marc Humblet1藤田 和彦2 (1.名古屋大学環境学研究科、2.琉球大学理学部物質地球科学科)

キーワード:サンゴ化石群集、中期更新世、海水準変動、隆起、港川層、沖縄

琉球列島には第四紀環境変動の記録を残したサンゴ礁複合体堆積物が広く分布している(i.e., 琉球層群;<1.45–1.65 Ma).なかでも,「新期石灰岩」として知られる<0.4 Maのサンゴ礁複合体堆積物は,アグラデーショナルもしくはレトログラデーショナルな累重様式を示す沈降傾向の期間(>0.4 Ma)からオフラップの累重様式を示す隆起傾向の期間(<0.4 Ma)への大規模な堆積様式の変化を記録している.本研究では,これらのうち最終間氷期[Marine Isotope Stage (MIS) 5] またはその前の間氷期(MIS 7)に形成したとされる港川層において調査を行った.港川層は沖縄本島南部やその周辺の島々に露出し,主にサンゴ石灰岩(バウンドストーン)と淘汰のよい砕屑性石灰岩(主に有孔虫化石に富むグレインストーン)の2つの岩相から成る.本層のサンゴ石灰岩はサンゴ化石を豊富に含むが,詳細な分類学的研究は行われておらず,港川層形成時の環境変動についても未解明なままである.

 そこで本研究では,港川層のサンゴ化石の群集組成および時空間分布,堆積物の特徴を調べ,海水準と堆積環境の変動を復元することを目的として調査を行った.調査地である沖縄本島南部に位置する採石場では,港川層は下位から順にUnit 1–4の4つのUnitに分けられる.本研究ではそれらのうち2つのUnit(Unit 2,3)について調査を行った.
 港川層のUnit 2,3から5つのサンゴ群集が確認された:群集1a(水深0–5 m),群集1b(水深0–25 m,低エネルギー環境),群集2(水深~30 m,もしくはそれ以浅の濁った環境),群集3a(水深0–20 m),群集3b(水深3–12 m).本研究では,港川層のUnit 2と3は異なる過程で形成されたことが示唆された.Unit 2におけるサンゴ石灰岩と隣接する淘汰のよい砕屑性石灰岩は,同時代に類似した環境下(水深~30 m,もしくはそれ以浅の濁った環境)で形成された.一方,Unit 3からは,サンゴ群集の時系列変化(群集1a→1b→3a→3b)が確認された.また,サンゴ石灰岩と隣接する淘汰のよい砕屑性石灰岩の間には溶解面が確認され,時間間隙があることも分かった.これらの結果から,Unit 3形成時には少なくとも2回の海進・海退サイクルがあったといえる.また,それらの形成と同時期に形成された断層が確認されたことから,港川層のサンゴ礁は地殻変動による小規模な水深の変化によっても影響を受けていた可能性がある.