日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 B (地球生命科学) » B-PT 古生物学・古生態学

[B-PT05] 地球生命史

2019年5月30日(木) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:本山 功(山形大学理学部地球環境学科)、生形 貴男(京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻)、守屋 和佳(早稲田大学 教育・総合科学学術院 地球科学専修)

[BPT05-P05] ジュラ紀前期の海洋無酸素事変に対するベントスの応答:豊浦層群西中山層より産出した生痕化石Phycosiphonの定量解析からの検討

*北畠 京祐1,2泉 賢太郎3大越 健嗣1 (1.東邦大学理学部生命圏環境科学科、2.茨城大学理学部理学科地球環境科学コース、3.千葉大学教育学部)

キーワード:生痕化石、Phycosiphon、トアルシアン期、海洋無酸素事変、豊浦層群、西中山層

トアルシアン期前期(ジュラ紀前期)の海洋無酸素事変(T-OAE)に関する古生物学的研究は海洋性微化石を含む体化石に主に焦点が当てられてきた。しかし、生痕を形成する軟組織のみから構成された海洋ベントスの古生態を理解するために重要な生痕化石は、比較的研究例が少ない。そのため、本研究では、T-OAE期におけるベントスの応答を評価するため、ジュラ紀前期の浅海層である豊浦層群西中山層(山口県下関市)より産出した小型ベントスの生痕化石Phycosiphonの単位面積当たりの被度・フラクタル次元・最大径を計測した。そして、これらの結果を用いて、小型ベントスの行動量、行動様式、最大サイズを推定した。更に、ジュラ紀前期の海洋の酸化還元状態を推定するため、先行研究の地球化学的なデータに加えて、本研究で新たにフランボイダル黄鉄鉱のサイズ計測を行い、平均サイズと標準偏差を求めた。
解析の結果、T-OAE期においてPhycosiphonの被度・フラクタル次元が低下し、最大サイズも減少していた。また、フランボイダル黄鉄鉱のサイズ計測の結果より、T-OAE期の海洋水塊中ではeuxinicな環境が卓越していたことが示唆された。先行研究の地球化学データに基づくと、海洋底層水においては主にdysoxicな環境が卓越していたと考えられる。以上より、ジュラ紀前期の海洋酸化還元環境の変動が、小型ベントスの生態や体サイズに対して制約を引き起こし越していた可能性がある。一般的には小型生物は大型生物に比べて環境変動の影響を受けにくいと見なされているが、T-OAEの影響は小型ベントスにまで及んでいたことが示唆された。