日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-01] 災害を乗り越えるための「総合的防災教育」

2019年5月26日(日) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:中井 仁(小淵沢総合研究施設)、小森 次郎(帝京平成大学)、林 信太郎(秋田大学大学院教育学研究科)

[G01-P04] 地震発生時のキャンパス内被害想定を教材にした防災教育

*山縣 毅1 (1.駒澤大学総合教育研究部自然科学部門)

キーワード:実践的授業、地震、アクティブ・ラーニング、教養教育、大学

関東地域では,現在,M7クラスの地震を発生させる活断層が活動期に入っている.特に,関東地域南部の首都圏の各都市では,震度6弱以上の地震が30年以内に発生する確率が48-85%に上昇している(地震調査研究推進本部、2018).中央防災会議首都直下地震対策検討ワーキンググループ(2013)は,首都直下でM7クラスの地震が起こった場合の被害想定を,死者数最大約23,000人,経済的被害約95兆円としている.駒澤大学駒沢キャンパス(世田谷区)も,大きな地震災害に見舞われる可能性がある.

駒沢キャンパスでの直近の震災は,1923年の関東大震災であり,この時は震度6強で揺れたと推定される.但し,現在この震災の跡としては,復興事業として建設された耐震建造物(耕雲館)が残っているのみで,他に震災の痕跡はない.この様な状況では,震災の記憶は薄くなり,これによる災害に対する被害想定の甘さ,仮想的安心感などにより,地震発生時に被害の一層の拡大を引き起こしかねない(文部科学省防災教育支援に関する懇談会,2007).これを軽減する防災教育では,継続的に,「それぞれが暮らす地域の、災害・社会の特性や防災科学技術等についての知識を備え、減災のために事前に必要な準備をする能力」や,「自然災害から身を守り、被災した場合でもその後の生活を乗り切る能力」などを修得し,能動的に防災に対応することのできるよう教育を行うことが必要である(文部科学省防災教育支援に関する懇談会,2007).特に,減災のため重要な地震発生時の初期対応については、自ら判断して安全を確保できることが重要である(文部科学省東日本大震災における学校等の対応等に関する調査報告書,2012).さらに,大学においては、地域の防災活動やその企画等に貢献できるよう、防災に対する知識・理解と技能を深めるための教育を行うことが望まれる(文部科学省東日本大震災を受けた防災教育・防災管理等に関する有識者会議最終報告,2012).

以上の防災教育の必要とされる事項を踏まえ,次の実践を目標に地震災害についてアクティブラーニングを用いた授業を行った.
  1.地震・地震動のメカニズム,及び,地震災害の理解
  2.震度6弱以上の地震動の仮想体験
  3.地震発生時に各自が危険を察知できるようにするイメージトレーニング
授業は,2018年年度前期に,駒沢大学地理学科の学生が受講する初年次教育科目のクラス(受講生40人)において試みた.授業内容は,以下の通りである.また,教育効果を測るため,本授業の第1回前と,第7回後に,受講学生に対しアンケート調査を行った.

第1回   地震発生のメカニズム・地震動・地震災害に関する対面授業

第2,3回  東京消防庁本所防災館(江東区本所)の地震動シミュレーターやその他教材による地震の仮想体験

第4~7回 キャンパス内の教室等の地震発生時の被害状況想定,地震後の教室等 から一時集合場所への避難経路の被害状況の想定.
      ①3~4人の班毎に,震度6弱以上での,キャンパス内の班担当の教室等の被害想定と,教室等からキャンパス内一時集合場所までの避難経路の実地調査
      ②実地調査のデータによる被害状況の想定と,各教室等・避難経路の地震発生時の危険個所の把握.
      ③班毎に,調査データ・被害想定の発表

本授業の前後に行った学生へのアンケート調査から,地震災害は自分自身の問題であるとの,学生への意識付けは達成できたと思われる.