日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-01] 災害を乗り越えるための「総合的防災教育」

2019年5月26日(日) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:中井 仁(小淵沢総合研究施設)、小森 次郎(帝京平成大学)、林 信太郎(秋田大学大学院教育学研究科)

[G01-P06] 防災学習と地学データを用いたデジタル教材の活用

*加藤 忠義1 (1.横浜市立もえぎ野中学校)

キーワード:防災学習、デジタル教材

世界で発生する地震のうち約2割は日本列島周辺で発生していることが知られており、2018年に発生した大阪北部地震(2018年6月18日)や北海道胆振東部地震(2018年9月6日)は記憶に新しい。巨大地震の発生をいち早くとらえるために、日本では、GNSS連続観測システム(GEONET)や高感度地震観測網(Hi-net)などが整備されており、緊急地震速報などに役立てられている。また、東北地方太平洋沖地震以降は、地震・津波観測監視システム(DONET)によって、海底の地殻変動も分かるようになってきた。これらの観測網で得られたデータは一般に公開されており、誰でも日本列島の地殻変動や地震活動について考えることができる。しかし、膨大なデータの処理やデータの可視化が困難なことから、なかなか教育現場で活用されていない。一方で、地球や惑星を立体的に表示することができるダジック・アース(http://earth.dagik.org)をはじめとするデジタル教材も登場してきており、近年重視されている、生徒に知識や情報を与えるだけでなく、生徒が課題を見つけ結論までを導き出す、能動的な学習方法(アクティブラーニング)への効果が期待されている。



 2017年3月に公示された新学習指導要領において、中学校理科では学習内容の再編成に伴い「自然災害との関連付け」が強化され、中学校3年間を通して「地球」分野の中で学習するようになった。さらに、地域や学校の周辺環境に応じた教科横断的な視点から「防災学習」を組み立てていくことの必要性が明示された。学習指導要領の改訂によって「防災学習」は、生徒が自然現象について、そこに隠れた科学的な事象を見つけたり、災害を予想した備えや想定外のできごとに対応するためにはどうしたらよいかを考えたりすることが必要になってきた。そのために、教師は「空間的・時間的に大きなスケールでの変動」をいかにして可視化し、その知識や情報をもとに、災害時にどのような行動をとるべきかを考えさせることが重要になってくるだろう。生徒にとって、博物館や野外観察など本物に触れることは、自然現象をとらえるうえで重要であるが、学校環境によってはこれらの学習活動が困難であることが多い。そこで、直感的に変化をとらえることができるデジタル教材の作成は重要であると考えられる。



 「地球規模の自然現象と身近な防災」を生徒が主体となって考えるためには、地球規模の変動を直接的にとらえることができるデジタル教材と、得られた知識や情報をもとに災害時について、生徒が主体的に考えて行動したり、災害に備えたりことができる体験型教材が必要だろう。今回は、国土地理院が公開している観測データをもとに、自分たちが生活している地域の地学的特徴を考えられるようなデジタル教材を作成した。生徒が生活している地域に即したデジタル教材はこれから起こると予想されている自然災害に対する防災・減災を考えるうえで極めて重要だろう。また、地域に即した視点から視野を広げていくことで、理科教育で設定されている「地球」の分野における特徴的な見方である“地球や宇宙に関する自然の事物・現象を主として時間的・空間的な視点で捉える”ことの強化につながるだろう。