日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-02] 地球惑星科学のアウトリーチ

2019年5月26日(日) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:植木 岳雪(千葉科学大学危機管理学部)、小森 次郎(帝京平成大学)、長谷川 直子(お茶の水女子大学)、大木 聖子(慶應義塾大学 環境情報学部)

[G02-P08] 第 19 回地震火山こどもサマースクール in 伊豆大島

*藤間 藍1日色 知也2地震火山子供サマースクール 運営委員会3 (1.慶應義塾大学、2.信州大学大学院、3.日本地震学会・日本火山学会・ 日本地質学会)

キーワード:地震火山こどもサマースクール、伊豆大島ジオパーク、地域防災、野外教育、キッチン火山学

地震火山こどもサマースクールは、日本地震学会, 日本火山学会, 日本地質学会を主催として、1999 年から毎年夏休みに全国各地で開催されている. このイベントの目的は, 研究の最前線にいる専門 家が、 こどもたちに地震・火山現象の発生要因と自然の大きな恵みについてわかりやすく伝えるこ とである(日色ほか, 2018)。
平成 30 年度は伊豆大島を舞台に地元の小学生から高校生まで 34 名を迎え実施した。 当初8 月 7 日, 8 日の 2 日間の開催を予定していたが、天候不順のため, 8 月 7 日の 1 日間に短縮しての開催とした。伊豆大島は, 一般に伊豆・小笠原弧上に位置し、太平洋プレートの沈み込みに伴うマグマの発生に より、現在まで火山活動が生じている火山島であると考えられている。最近の火山活動としては、1986 年の三原山噴火が挙げられる。
今回は「火山島 伊豆大島のヒミツ」をテーマに、島の誕生から現在までの歴史やそこに成立した 地域社会との関係について、野外観察や身近な材料を使った実験, 研究者との対話を通して、こどもたちが火山噴火の仕組みを理解し、自然の恵みや観光, 自然災害についての理解を深めるとともに、島の過去, 現在, そして未来を考えることを活動の目的とした。こどもたちは1日の中で地形, 地層, および溶岩に関する野外観察, 室内実験と講義を通じて学習し、島の成り立ちについて理解を深めた。地形観察では、伊豆大島西側の溶岩台地や元町地区の街並み、カルデラ内部の構造を観察し、自分た ちが住んでいる島の土地について学んだ。地層観察では、 大島温泉ホテル付近の露頭にて火山灰を観察した。 火山灰中には神津島由来の灰白 色の火山灰が挟まれており、短い期間に別の島でも噴火していたことを学んだ。溶岩の観察では、パホイホイ溶岩とアア溶岩の産状の違いについて学んだ。室内では、カルデラ形成のメカニズムを再現したカルデラ実験, マグマの性質と上昇過程を再現し たマグマだまり実験, パホイホイ溶岩の移動と形成を再現した溶岩実験, 炭酸を用いて噴火様式に ついて再現した噴火実験を行った。
1日の最後には、こどもたちはチームごとに学んだことをまとめ, 発表を行った。今回のサマースクール終了後、実行委員会はこどもたちからのアンケートや発表内容、および携 わったスタッフの意見をもとに、来年度のサマースクールの方針を議論した。実行委員会のスタッフの意見では、地元スタッフの長年の経験や機転の利いた行動で、運営をス ムーズに進められたことが挙げられた。また、こどもたちのアンケート結果からは、 4つの実験のうち3つで「よかった」と回答した人が 80%を超えており、こどもたちは実験に対して高い関心があったことを示している。さらに、地形および地層の観察でも 22 人(65%)が「よかった」と回答しており、地形地質学的な 諸現象への関心の高さがうかがえる。こどもたちの発表では、活火山は常に活動しており、生活する上で不便なこともあるが、温泉や良い 漁場など多くの恩恵の受けているという意見が挙げられた。
毎年2日間かけて行われるプログラムを1日に短縮しての開催となったが、こどもたちは観察や 実験、講義を通して火山現象の発生要因を解き明かし, 火山島で住むことで得られる自然の恵み, 自然災害との共生のしかた, 伊豆大島の過去, 現在, そして未来について考え、有意義なサマース クールとなったと考えられる。