[HCG32-P01] 新潟県上越地域における海浜礫の形状変化から考える礫の磨耗過程
キーワード:海浜礫、粒径、扁平度、円磨度
新潟県上越地域の河口周辺の海岸に分布する礫浜海岸では,多種多様な礫種を確認することができ,海浜礫の粒度分布や礫種組成についての研究がなされてきた.しかし河川から運搬されてきた礫がどのように海浜に堆積し,磨耗されていくかに関する研究はほとんど行われておらず,全国的にみてもこれに関する研究は多くない.海浜礫が河口から海岸を運搬されるに伴ってどのように破砕作用や磨耗作用を受けているかを研究することは,河川からの砕屑物の供給が海浜に及ぼす影響の評価につながると期待される.
新潟県上越地域は北部フォッサマグナ地域の最北部に位置し,フォッサマグナ西縁に伸びる糸魚川―静岡構造線を境に,東側の地域と西側の地域とは地形的,地質的に大きく異なっている(たとえば,長森ほか2010).東部では能生川,早川などの5つの河川が流れており,糸魚川-静岡構造線に沿うように姫川が流れている.
これらの礫浜で地域の養浜や護岸の状況を考慮して,姫川河口周辺(河口から西側に1800mまでの範囲で概ね500mごと)と,早川河口周辺・能生川河口周辺(共に河口付近と西側300m)で礫の測定を行った.各調査地点では前浜・後浜それぞれで海岸線に沿った50mのラインを設定し,各河川で特有かつ他の礫種と見分けがつきやすい礫種の礫を「特徴礫」として測定の対象とし,姫川河口周辺では3種類,早川河口周辺・能生川河口周辺ではそれぞれ1種類の特徴礫の粒径と円磨度を測定した.粒径の測定は長径(a),中間径(b),短径(c)の三軸を測定し,三軸の積の三乗根を平均粒径とした.また三軸を用いた礫の形状分類(Zingg,1935)を用いてその形状的特徴を評価した.円磨度は円磨度印象図(Krumbein,1941)と円磨度印象図のための補助フローチャート(宇津川・白井2016)に基づいて測定した.
その結果,河口から遠ざかるにつれて明らかな変化が確認されたものは粒径の減少のみであった.また,河口付近から遠ざかると礫の淘汰が良くなり,粒径が減少する際には長径,中間径,短径の順に破砕・磨耗しやすい規則性が見られることが分かった.
扁平度や円磨度は河口からの距離ではなく,粒径や礫種との相関が見られた.また,礫の形状は様々な形状の礫が破砕・磨耗作用によって,まず長径が急速に減少することによって円盤状となり,さらに中間径が減少することによって球状になることが分かった.
複数の礫種を測定対象とした姫川河口周辺の測定結果に着目すると,河口から離れるに従って粒径が減少しやすい順番と円磨度の低い順番は共に礫岩・花崗岩・蛇紋岩となった.礫岩の中に含まれる礫が脱落すると粒径は減少する一方で円磨度は低下することなどから,粒径の減少と円磨度には構成する粒子および鉱物の大きさが大きく関係していると思われる.
参考文献
Krumbein,W.C.1941.Measurement and geologic significance of shape and roundness of sedimentary particles.Journal of Sedimentary Petrology 11:64—72.
公文富士夫・立石雅昭1998.新版 砕屑物の研究法,地学双書29:399.
長森英明・竹内 誠・古川竜太・中澤 努・中野 俊2010.小滝地域の地質.地域地質研究報告(5万分の1地質図幅)地質調査総合センター 金沢10:19.
宇津川喬子・白井正明2016.砕屑粒子の形状に関する研究史と今後の展望―特に円磨度に注目して―,地理学評論 89(6):329—346.
Zingg,T.1935.Beiträge zur Schotteranalyse.Schweizerische Mineralogische und Petrographische
新潟県上越地域は北部フォッサマグナ地域の最北部に位置し,フォッサマグナ西縁に伸びる糸魚川―静岡構造線を境に,東側の地域と西側の地域とは地形的,地質的に大きく異なっている(たとえば,長森ほか2010).東部では能生川,早川などの5つの河川が流れており,糸魚川-静岡構造線に沿うように姫川が流れている.
これらの礫浜で地域の養浜や護岸の状況を考慮して,姫川河口周辺(河口から西側に1800mまでの範囲で概ね500mごと)と,早川河口周辺・能生川河口周辺(共に河口付近と西側300m)で礫の測定を行った.各調査地点では前浜・後浜それぞれで海岸線に沿った50mのラインを設定し,各河川で特有かつ他の礫種と見分けがつきやすい礫種の礫を「特徴礫」として測定の対象とし,姫川河口周辺では3種類,早川河口周辺・能生川河口周辺ではそれぞれ1種類の特徴礫の粒径と円磨度を測定した.粒径の測定は長径(a),中間径(b),短径(c)の三軸を測定し,三軸の積の三乗根を平均粒径とした.また三軸を用いた礫の形状分類(Zingg,1935)を用いてその形状的特徴を評価した.円磨度は円磨度印象図(Krumbein,1941)と円磨度印象図のための補助フローチャート(宇津川・白井2016)に基づいて測定した.
その結果,河口から遠ざかるにつれて明らかな変化が確認されたものは粒径の減少のみであった.また,河口付近から遠ざかると礫の淘汰が良くなり,粒径が減少する際には長径,中間径,短径の順に破砕・磨耗しやすい規則性が見られることが分かった.
扁平度や円磨度は河口からの距離ではなく,粒径や礫種との相関が見られた.また,礫の形状は様々な形状の礫が破砕・磨耗作用によって,まず長径が急速に減少することによって円盤状となり,さらに中間径が減少することによって球状になることが分かった.
複数の礫種を測定対象とした姫川河口周辺の測定結果に着目すると,河口から離れるに従って粒径が減少しやすい順番と円磨度の低い順番は共に礫岩・花崗岩・蛇紋岩となった.礫岩の中に含まれる礫が脱落すると粒径は減少する一方で円磨度は低下することなどから,粒径の減少と円磨度には構成する粒子および鉱物の大きさが大きく関係していると思われる.
参考文献
Krumbein,W.C.1941.Measurement and geologic significance of shape and roundness of sedimentary particles.Journal of Sedimentary Petrology 11:64—72.
公文富士夫・立石雅昭1998.新版 砕屑物の研究法,地学双書29:399.
長森英明・竹内 誠・古川竜太・中澤 努・中野 俊2010.小滝地域の地質.地域地質研究報告(5万分の1地質図幅)地質調査総合センター 金沢10:19.
宇津川喬子・白井正明2016.砕屑粒子の形状に関する研究史と今後の展望―特に円磨度に注目して―,地理学評論 89(6):329—346.
Zingg,T.1935.Beiträge zur Schotteranalyse.Schweizerische Mineralogische und Petrographische