日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS14] 湿潤変動帯の地質災害とその前兆

2019年5月27日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:千木良 雅弘(京都大学防災研究所)、八木 浩司(山形大学地域教育文化学部)、小嶋 智(岐阜大学工学部社会基盤工学科)、内田 太郎(国土技術政策総合研究所)

[HDS14-P09] 衛星干渉SAR解析に基づく2018年の北海道胆振東部地震災害による地表変動と建物被害分布,および多時期のLiDAR DEMデータ解析による地表変位の抽出

*本田 謙一1浅田 典親1虫明 成生1西村 智博1向山 栄1 (1.国際航業株式会社)

キーワード:地震、合成開口レーダー、航空レーザスキャナ

地震国である日本にとって,地震が発生した際,迅速に建物の被災状況を把握することは,災害の初動対応において非常に重要である.
衛星リモートセンシングは,広域を計測できることから,災害時の被害把握が期待されている.しかし,衛星の観測頻度や解析処理時間,初期に求められる情報の選定等,実用への課題は多い.
本発表では,衛星リモートセンシングを活用することで提供できる情報の事例として,今年度発生した災害の内,北海道胆振東部地震(9/6)に対するSARと多時期のLiDAR DEMデータ解析による対応について紹介する.
液状化の被害があった札幌市清田区の解析を行った.Sentinel-1による干渉解析の変位は不連続かノイズとなっており,被害地域の変位抽出は困難であったが,干渉性(コヒーレンス)の変化から被害域を抽出できた.対して,ALOS-2では干渉性の低下は小さく,干渉画像の変位が被害域の抽出に適していた.これは観測波長帯域の違いによる感度の違いによるものと考えられる.
比較のため,航空レーザースキャナの災害前後2時期の計測データを用いた,3D-GIVの解析から,水平移動を含む地表変位の解析結果と比較した.災害前の人工改変の影響も含まれるが,災害による谷埋め盛土の沈下や水平移動の領域とSARの結果が一致していることが確認できた.
この地震では地震直後の9月6日5時40分にSentinel-1が観測されたため,地震当日中に解析し,解析結果を現地社員に提供した.地震翌日の9月7日に現地確認を行い,その結果を被災自治体等に提供した.地震当日を除き,天候が悪く航空機が撮影できない状況が数日続いたため,迅速に広域の被災範囲を抽出するという衛星SARの利点が活かせた事例といえる.
本研究では,SARによる建物被害抽出事例を紹介した.
衛星リモートセンシングによる被害把握は有用ではあるが,日本国内では,災害直後から現地への踏査や航空機による状況把握が行われ,衛星リモートセンシングが活用される状況は実態としては少ない.
しかし,北海道胆振東部地震で行われたように,衛星データを迅速に撮影し,解析結果を提供することで,初期の災害情報把握の一つの選択肢になり得ることを示した.また,建造物被害域の推定は,光学写真で判読することは難しく,SARの干渉性による推定の意義は大きいと考えられる.
最後に,このたびの災害で被災された方々に謹んでお見舞い申し上げます.