日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS14] 湿潤変動帯の地質災害とその前兆

2019年5月27日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:千木良 雅弘(京都大学防災研究所)、八木 浩司(山形大学地域教育文化学部)、小嶋 智(岐阜大学工学部社会基盤工学科)、内田 太郎(国土技術政策総合研究所)

[HDS14-P14] 関東山地三峰地域における線状凹地を埋積する堆積物

*益子 将和1千木良 雅弘2 (1.京都大学大学院理学研究科、2.京都大学防災研究所)

キーワード:山体重力変形、線状凹地、堆積物、ボーリングコア、テフラ

山体重力変形の発生・発達メカニズムは未だ不明な点が多い.我々は,四万十付加コンプレックスが分布する関東山地三峰地域において,山体重力変形の発生・発達メカニズムの解明を目的として調査を行っている.ここでは,東流する中津川と荒川との間の山稜頂部に約6kmにわたって断続的に連続する山上凹地が存在し,大規模な重力斜面変形を示唆している.この山上凹地内の2.3km離れた2か所で,パーカッション式簡易ボーリングを用いて凹地の埋積堆積物を採取した.東のボーリングがP1,西がP2である.

 P1とP2は,それぞれ6.75mと6.95mで岩盤に到達した.埋積堆積物は,表層からおよそ1.0mの深さまで黒褐色の腐植土および粘土,またそれ以深より基盤岩に至るまでは褐色粘土で構成される.
 ボーリングコア中に含まれるテフラを特定することで,線状凹地や,その山腹斜面にみられる山体重力変形の発生年代を推定することができる.深さ20cmごとにボーリングコア中の火山ガラス含有率を測定したところ,P1では2.20m付近に,P2では2.40mおよび6.00m付近にそれぞれ火山ガラス含有率のピークが認められた.三峰地域一帯における堆積物からは,姶良Tnテフラ (AT) (2.6から2.9万年前),御岳第一テフラ (On-Pm1) (約10万年前),八ヶ岳川上テフラ (Yt-Kw) (約17万年前) などのテフラが同定されている.このことから,コア中の火山ガラスはこれらのいずれかのテフラが起源であると考えられる.コア中に含まれるテフラを同定するため,現在これらの火山ガラスの屈折率を分析中である.なお,P1の東方2kmの大滝げんきプラザでは当該山上凹地内に厚さ約10mの堆積物が確認され,岩盤から約2m上でYt-Kwが,そしてその上にはOn-Pm1が報告されており (埼玉県地質図編纂委員会,1999),この部分の山上凹地形成は17万年よりも前にさかのぼると推定される.

 調査地域における山体重力変形のメカニズム解明のためには,地域の地形学的・地質学的特徴を明らかにすることが不可欠である.線状凹地の堆積物の調査とともに,地域の地質構造を明らかにするための現地調査を今後も引き続き行う予定である.