日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-GM 地形学

[H-GM04] 地形

2019年5月29日(水) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:八反地 剛(筑波大学生命環境系)、瀬戸 真之(福島大学うつくしま福島未来支援センター)

[HGM04-P02] DEMを用いた流域の平均侵食量の関数化

*山中 玲1青木 賢人1 (1.金沢大学)

キーワード:地形発達、数値標高モデル(DEM)、平均侵食量、高度分散量、地理情報システム(GIS)

1.はじめに
 日本の湿潤変動帯における地形発達モデルは,これまでも数多く議論されている.吉川(1985)は,日本での湿潤変動帯における変動地形を考慮した地形発達モデルとして議論する必要性を示した.また,Ohmori(1978)は,50mDEMを用いた高度分散量から,山地の成長段階を評価している.
 本研究では,全国的に入手可能な10mDEMを用い,ArcGISにより流域単位での平均侵食量を求め,Ohmori(1978)の高度分散量のデータと比較した.

2.対象地域
 Ohmori(1978)で分析している山地から発達段階別で,宗谷丘陵,太平山地,阿武隈高原,白神山地,三河高原,白山,関東山地,赤石山地,飛騨山脈に絞った.

3.解析方法
 ArcGISにて集水域ごとの平均侵食量を算出した.
 対象地域のDEMより(1)集水域の作成,(2)接峰面の作成(グリッド法),(3)侵食深の算出,(4)集水域ごとの平均侵食量を算出,これを元に(5)グリッドサイズを3から301の間で変更し,平均侵食量を算出した.(1)については累積流量図と河川データによりしきい値を決定し,二次河川以上を集水域とみなした.接峰面は侵食前の仮想的な地表とみなすことができることから,(2)で求めた接峰面とDEMの差分で(3)侵食深を算出し,(4)集水域ごとの平均侵食量を求めた.
 (2)から(5)はスクリプトによる処理の自動化(Arcpy)により処理を行った.

4.平均侵食量の関数化
 接峰面を作成した際に使用したグリッドサイズと侵食量の関係を関数化した.その際,一次関数,べき関数,指数関数,対数関数にグラフフィッテングし,近似曲線とその誤差について求めた.
 この結果,最もフィットした関数は対数関数「y=alog(1+bx)」であり,誤差が最小であった.
 bが一定,aがN倍の場合,グラフはN倍となる.aが一定,bがN倍の場合,グラフは1/Nに縮小する.よって,aは谷の深さを,bは谷幅を表すと考えられる.

5.山地別平均侵食量の評価
 関数化した山地別平均侵食量から,係数による散布図を作成した.
 Ohmori(1978)の地形発達区分による同じ地形発達段階でも,白神山地や三河高原のように,地形発達としては三河の方が進んでいるとされているが,谷は白神山地の方が深いことが読み取られ,白神山地はより急な谷が存在していることがわかった.

6.まとめ
 平均侵食量の関数化により,同じ山地内の侵食部分の特定が可能となる.また,Ohmori(1978)の地形発達区分と合わせ,これから侵食する場所も把握できる.
 更に,山地の規模を広げた考察が可能であるため,山地の発達段階を予想することができる.反対に規模を狭め,集水域単位での考察も可能であることから,今後の地形変化の評価ができると考えられる.