[HQR05-P14] 志摩半島志島低地で発見された天城カワゴ平(Kg)テフラと津波履歴復元における意義
キーワード:志摩半島、志島低地、南海トラフ、天城カワゴ平テフラ、津波履歴、津波堆積物
紀伊半島東部から南部にかけての沿岸は,南海トラフの中部に面し,過去からくり返す巨大地震の東南海セグメントと南海セグメントの境界付近に位置する.このため本地域での津波履歴の復元は,過去の南海トラフ地震の破壊域を評価する上で非常に重要である.このため各地で津波堆積物調査が進められているが,それらの地域間の対比が課題となっている.我々は志摩半島の志島低地において掘削調査で得られた湿地堆積物中から,津波イベントの対比において有効な広域テフラである天城カワゴ平(Kg)テフラ(3100 cal yBP頃)を検出したので報告する.
志島低地ではFujino et al. (2018)によって,湿地堆積物中に10層のイベント砂層(上位からSand A〜J)が認識され,津波履歴が論じられている.本研究では同低地において深度483 cmまでハンドコアラ−で掘削し,得られた試料から砂層を除いた260 cm分の有機質シルトについて,5 cmずつ分割して分析用の試料とした.これらは細粒物を取り除き,500〜125μmの粗粒物質を抽出して顕微鏡で観察を行ってテフラの有無を探った.その結果,深度265-270 cmおよび275-280 cmからおもに軽石型の火山ガラスを検出した.特に深度276 cm付近はコア観察の段階で層厚5 mm程度の淡白色の層を肉眼で確認できる.一方でそれ以外の層準からは火山ガラスは検出できなかった.またFujino et al. (2018)におけるA2コアからもSand GとSand Hの間の有機質シルト層中に淡白色を帯びた部分が層厚5-8 mm程度で確認され,検鏡したところ同様の火山ガラスを検出した.
これらの火山ガラスについて,温度可変型屈折率測定装置(MAIOT)を使って屈折率測定を行った結果,屈折率は1.499~1.501の間に集中しており,町田・新井(2003)による天城カワゴ平(Kg)テフラの屈折率(1.495-1.502)と一致した.さらに株式会社古澤地質に依頼してEDXによる主成分分析も行い,天城カワゴ平(Kg)テフラに関するこれまでの研究成果と矛盾しないことを確認した.
今回天城カワゴ平(Kg)テフラを検出した層準は,Fujino et al. (2018)においてイベント年代が絞り込めていなかったSand GとSand Hの間にあり,年代推定において非常に大きな拘束力を持つ.本研究の結果,Sand Gは3100‐2740 cal yBP,Sand Hは3600‐3100 cal yBPと推定できる.
紀伊半島では,南端の串本でイベント砂層の挟まる湿地堆積物中から天城カワゴ平(Kg)テフラ検出の報告がある(北川ほか,2017).串本のイベント砂層の場合,天城カワゴ平(Kg)テフラの上位の砂層は14C年代から2950 – 2470 cal yBP,下位の砂層は3390 – 3100cal yBPと推定され(宍倉ほか,2014),それぞれ志島低地のイベント砂層と対比できる可能性がある.今後,紀伊半島東部沿岸各地において,天城カワゴ平(Kg)テフラを鍵層としてイベント砂層を対比していくことで,南海トラフ地震の発生パターンの解明につながると期待される.
本研究は文部科学省(JAMSTEC委託)の南海トラフ広域地震防災研究プロジェクトの一環として実施している.
志島低地ではFujino et al. (2018)によって,湿地堆積物中に10層のイベント砂層(上位からSand A〜J)が認識され,津波履歴が論じられている.本研究では同低地において深度483 cmまでハンドコアラ−で掘削し,得られた試料から砂層を除いた260 cm分の有機質シルトについて,5 cmずつ分割して分析用の試料とした.これらは細粒物を取り除き,500〜125μmの粗粒物質を抽出して顕微鏡で観察を行ってテフラの有無を探った.その結果,深度265-270 cmおよび275-280 cmからおもに軽石型の火山ガラスを検出した.特に深度276 cm付近はコア観察の段階で層厚5 mm程度の淡白色の層を肉眼で確認できる.一方でそれ以外の層準からは火山ガラスは検出できなかった.またFujino et al. (2018)におけるA2コアからもSand GとSand Hの間の有機質シルト層中に淡白色を帯びた部分が層厚5-8 mm程度で確認され,検鏡したところ同様の火山ガラスを検出した.
これらの火山ガラスについて,温度可変型屈折率測定装置(MAIOT)を使って屈折率測定を行った結果,屈折率は1.499~1.501の間に集中しており,町田・新井(2003)による天城カワゴ平(Kg)テフラの屈折率(1.495-1.502)と一致した.さらに株式会社古澤地質に依頼してEDXによる主成分分析も行い,天城カワゴ平(Kg)テフラに関するこれまでの研究成果と矛盾しないことを確認した.
今回天城カワゴ平(Kg)テフラを検出した層準は,Fujino et al. (2018)においてイベント年代が絞り込めていなかったSand GとSand Hの間にあり,年代推定において非常に大きな拘束力を持つ.本研究の結果,Sand Gは3100‐2740 cal yBP,Sand Hは3600‐3100 cal yBPと推定できる.
紀伊半島では,南端の串本でイベント砂層の挟まる湿地堆積物中から天城カワゴ平(Kg)テフラ検出の報告がある(北川ほか,2017).串本のイベント砂層の場合,天城カワゴ平(Kg)テフラの上位の砂層は14C年代から2950 – 2470 cal yBP,下位の砂層は3390 – 3100cal yBPと推定され(宍倉ほか,2014),それぞれ志島低地のイベント砂層と対比できる可能性がある.今後,紀伊半島東部沿岸各地において,天城カワゴ平(Kg)テフラを鍵層としてイベント砂層を対比していくことで,南海トラフ地震の発生パターンの解明につながると期待される.
本研究は文部科学省(JAMSTEC委託)の南海トラフ広域地震防災研究プロジェクトの一環として実施している.