日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-SC 社会地球科学・社会都市システム

[H-SC07] 地球温暖化防止と地学(CO2地中貯留・有効利用、地球工学)

2019年5月29日(水) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:徂徠 正夫(国立研究開発法人産業技術総合研究所地圏資源環境研究部門)、薛 自求(公益財団法人 地球環境産業技術研究機構)、愛知 正温(東京大学大学院新領域創成科学研究科)

[HSC07-P05] 炭酸塩反応に伴うキャップロック模擬岩石の遮蔽性能変化

*徂徠 正夫1 (1.国立研究開発法人産業技術総合研究所地質調査総合センター)

キーワード:CO2地中貯留、遮蔽性能、地化学反応、キャップロック、炭酸塩鉱物

CO2地中貯留は、キャップロックによりCO2が地表に漏洩することなく安定に隔離され続けることを前提としている。しかしながら、CO2が溶解した間隙水中で長期にわたる地化学プロセスを経た後も、キャップロックの遮蔽性能が保証されるかどうかは確認されていない。そこで、本研究では反応に伴う岩石の遮蔽性能の変化を定量的に評価した。

岩石の反応とそれに伴う空隙構造の変化を定量的に理解するためには、反応プロセスが明確、かつ空隙構造を制御した系で実験を行うことが合理的である。そこで、0.5、1、5、10µmの粒径からなる2種類の密度のシリカ粒子焼結体をベースとし、その間隙中に炭酸カルシウム(CaCO3)を含む人工試料を作製して供試体とした。本試料を10 MPa、40ºCの超臨界CO2-水条件下で反応させ、浸透率kの経時変化を調べた。

岩石空隙中のCaCO3が溶解するとkが増加し、逆にCaCO3が沈殿するとkが低下することが予想される。このシナリオを実験結果に適用し、CaCO3の反応に伴うkの変化のメカニズムを考察した。高密度試料では、CO2溶存水の浸透により試料の周囲からCaCO3が溶解するが、溶液がCaCO3飽和濃度に達するとそれ以降の溶解は起こらない。また、溶液が飽和濃度に達していなくても、試料内部では溶出成分の逃げ場がないため、局所的にCaCO3に対して過飽和となり、再沈殿が起こり得る。このため、kは初期に増加するが、その後は一定あるいは元のレベル程度まで低下することが予想される。これに対して低密度試料では、CO2溶存水が試料深部にまで浸透し、試料表面と内部での物質の移動も容易であるため、より多くのCaCO3が溶出することでkが増加する。今後は、kに依存した岩石内部での浸透速度とCaCO3含有量に基づいて、キャップロックからの漏洩リスクの定量化を図ることが課題である。