日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-SC 社会地球科学・社会都市システム

[H-SC07] 地球温暖化防止と地学(CO2地中貯留・有効利用、地球工学)

2019年5月29日(水) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:徂徠 正夫(国立研究開発法人産業技術総合研究所地圏資源環境研究部門)、薛 自求(公益財団法人 地球環境産業技術研究機構)、愛知 正温(東京大学大学院新領域創成科学研究科)

[HSC07-P08] 光ファイバーにより計測された地層変形とその堆積学的解釈:房総半島砂泥互層帯水層の例

*伊藤 拓馬1,2橋本 励1,2薛 自求1,2 (1.公益財団法人地球環境産業技術研究機構、2.二酸化炭素地中貯留技術研究組合)

キーワード:砂岩泥岩互層、光ファイバー、地層変形監視

砂泥互層から構成される帯水層を対象とし,光ファイバー現場実証試験が行われている.本サイトでは既存井戸を利用した揚水試験が行われ,それに伴う地層変形を分布式光ファイバーにより計測できている.これまでに実施された揚水試験の結果は,地下水の汲み上げが地層の圧縮ひずみとして検知され,地層のひずみは一様でないことが計測されている.この地層のひずみは,地層を構成する岩相の差異に由来する不均質性と密接に関係する可能性が高い.これまでに,光ファイバーで地層変形を計測している井戸からコア試料を掘削しているが,コア分析に基づく堆積学的な特徴は充分に把握されていないのが現状であった.本研究の目的は,コア試料の堆積学的な検討から地層の堆積環境および粒度分布の特徴を把握し,その堆積学的特徴と揚水試験により生じた地層のひずみとの関係を検討することである.

コア試料は房総半島更新統の帯水層から採取され,その岩相は砂泥互層を主体とする.コア試料の堆積相解析の結果から,砂泥互層を構成する砂層の粒度や堆積構造の鉛直変化の特徴は大きく3タイプに区分される.タイプ1は基底部に浸食面を有し正級化構造の発達するもの,タイプ2は基底部付近で逆級化を示した後,正級化構造を示すもの,タイプ3は礫サイズの泥岩偽礫を含むものである.上記砂層の特徴は,先行研究でも記載例があり,火山灰鍵層を利用した空間的な砂層単層解析や砂岩形状解析から,陸棚外縁帯三角州前縁部付近で形成されたことが指摘され,本コア試料の堆積相もその解釈を支持する.コア深度164~230mの粒度分析を行った結果,砂泥互層には3つの堆積サイクルが認められた.この堆積サイクルは,鉛直方向の不均質性に由来しており,その成因は海進・海退サイクルに応答している可能性がある.

揚水試験の結果,深度164~230mには地層の圧縮ひずみの生じない部分が4深度で確認された.これらの深度は光ファイバー設置器具の位置とは無関係であり,地層の堆積岩石学的特徴を捉えている可能性が高い.揚水による地層変形とコア分析に基づく堆積サイクルを比較すると,圧縮ひずみの生じた深度では砂層が粗粒化しており,変形の小さな深度では砂層は細粒化する傾向があることが判明した.これは,砂泥互層を構成する粘土分に乏しい淘汰良好な粗粒な砂層から選択的に揚水される現象を捉えており,地下流体移動には地層の不均質性が大きく影響することを示唆している.コア試料に認められる砂泥互層の堆積サイクルは,自然ガンマ線検層や比抵抗検層等の物理検層には明瞭に現れておらず,コア分析から明らかになるような詳細な地質状況の違いが光ファイバーによるひずみの変化として捉えられていることが判明した.今回の砂泥互層帯水層の事例研究から,光ファイバーの現場利用は,帯水層の地質性状と密接に関係する透水性等の水理地質学的情報を地層変形モニタリングから間接的に評価できる可能性があることが示された.