[HTT23-P06] 位置情報を用いた小学生児童の登下校空間の分析-富山市速星小学校区と芝園小学校区の事例-
キーワード:児童、通学、位置情報、ICT
登下校における児童の安全安心への社会的な関心は1990年代以降、高くなっている。児童は屋外空間を利用して学校-自宅の間を行き来する。件数は多くはないが、犯罪、事故の被害から児童を守るために見守り活動や都市の整備が行われている。これらの効果的な取り組みのために、児童の屋外活動、特に登下校がどのように行われているのかを把握する必要がある。現在では情報通信技術(ITC)の進歩により、児童の位置情報を利用した研究が可能となりつつある。富山市ではスマートシティ推進基盤構築事業としてLPWAが居住域98%をカバーする基盤を構築した。そこで芝園小学校区と速星小学校区でLoRaWANによる位置情報端末を用いた児童の位置情報を用いて登下校空間の特徴を把握した。芝園小学校区は中心市街地の、速星小学校区は郊外住宅団地と工業地域を抱える小学校区である。また、芝園小学校は個別の登校を、速星小学校は集団登校を実施している。位置情報取得のセンサーデバイスからは1分間隔でGPS位置情報(緯度・経度)を送信される。実施期間は2019年1月21日から2月15日の期間で、芝園小学校区で267名、速星小学校区で550名の参加者が得られた。分析は分布と密度の観点から行った。その結果、設定されている通学路に沿った形で高密度の点分布が見られることがわかり、学校が設定している通学路が卓越して利用されていることがわかった。しかしながら、学校が指定していない経路でも学童保育などへの移動の便から意外な小径も高密度で使われている事例も収集された。また登校と下校をする児童数は同じだが、登下校で密度分布に大きな差が見られた。これは放課後の活動により児童の移動が下校時に多様になるためであると考えられる。時刻別に点分布をみると危険地点を通過する時刻が明らかとなり、地域社会が対処すべき課題をわかりやすく示すことができた。学年別の点分布の差をみると低学年ほど広がりを持つこともわかった。これは低学年が下校時に保護者の自動車移動に依存して様々な場所へ移動するのに対して、高学年になると自律的な移動や帰宅後に外出するためだと考えられる。大量の児童の位置情報より、今まで定性的な結論付けしかできなかった検証のエビデンスにつながる結果がみえてきたことに大きな意義を得た。今回の研究結果は、児童の安全を守る地域のステークホルダーとの連携協議を行う時に活かされるものである。