[MGI31-P08] 地球科学における市民参加型オープンサイエンスの推進:流星の超低周波帯における電波放射と異常聴音の観測・データ解析プロジェクト
キーワード:オープンサイエンス、流星電波放射、流星異常聴音
オープンサイエンスに関連した主要な活動として、市民参加型科学研究の推進が謳われているが、超高層物理学などの物理系地球科学分野では、一般市民の関心を呼ぶテーマの設定は容易で無い。しかし流星の研究においては、眼視観測など特別な装置を必要としない観測が主流であったことなどから、大学や高校の天文クラブなどのアマチュア観測者の寄与が大きく、研究面においても高レベルの市民科学者を輩出している。一方流星観測者の間では、明るい流星(火球)の発生と同時に「音」が聞こえたような感覚があるという、流星異常聴音が長年の「謎」となっており、流星によって放射される強いkHz領域(ELF/VLF帯)における電波が、何らかの理由によって聴覚として感じられる可能性が示唆されていた(Keay, 1980)。そして1981年8月13日03時53分41秒前後に紀伊半島上空に出現した、-6等級の火球(ペルセウス流星群)に伴い、当時の名古屋大学空電研究所佐久島観測所と豊川市内において、通常の雷起源の空電とは異なる特異な周波数スペクトルを持った、強いVLF帯電波が観測された(Watanabe et al., 1988; Keay, 1992). その後同様の観測が各国で行われているが、個々の流星との対応は余り考慮されておらず、通常の空電との区別が明確でない。そこで上記のペルセウス群などの顕著な流星群の活動期に、アマチュア観測者によって全国的に行われる眼視、ビデオ、VHF流星エコーなどによる流星観測とELF/VLF帯電波研究者との連携態勢を構築し、流星電波放射の観測例を増やすとともに、流星異常聴音に関する情報も収集して、現象の解明を目指す。我が国では日本流星研究会を中心としたアマチュア流星観測者の組織化と観測データの保全が行われているため、市民参加型科学研究活動の好例として、流星電波放射と異常聴音に関わる現象の解明が進むことが期待される。なおこの研究は、大矢浩代(千葉大)、塩川和夫(名大ISEE)、加藤泰男(名大ISEE)、鈴木和博(日本流星研究会)の各氏との共同で推進される。
Keay C. S. L., Anomalous Sounds from the Entry of Meteor Fireballs, Science, Vol. 210, 11-15, 1980.
Watanabe T., Okada T. and Suzuki K., Meteors and Radio Waves, HAM Journal, No. 54, 109-115, 1988.
Keay, C. S. L., Asteroids, Comets, Meteors 1991, Lunar and Planetary Institute, Houston, 297 300, 1992
Keay C. S. L., Anomalous Sounds from the Entry of Meteor Fireballs, Science, Vol. 210, 11-15, 1980.
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Keay, C. S. L., Asteroids, Comets, Meteors 1991, Lunar and Planetary Institute, Houston, 297 300, 1992