日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS03] アジア・モンスーンの進化と変動,新生代全球気候変化におけるモンスーンの位置づけ

2019年5月30日(木) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:山本 正伸(北海道大学大学院地球環境科学研究院)、多田 隆治(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)

[MIS03-P05] 水月湖コアの長鎖脂肪酸水素安定同位体比にみられる十年規模変動

*稲垣 征哉1山本 正伸1,2中川 毅3 (1.北海道大学大学院環境科学院、2.北海道大学大学院地球環境科学研究院、3.立命館大学総合科学技術研究機構古気候学研究センター)

キーワード:PDO、降水同位体比、気候変動

我が国の気候は太平洋十年規模変動(PDO)やモンスーン,エルニーニョ南方振動の影響を受けている.本研究では,福井県水月湖コアの長鎖n-脂肪酸の水素同位体比を分析することにより,西暦1362~1662年と1853~2017年の降水同位体比の変動を推定した.長鎖n-脂肪酸の水素同位体比δD値は-120 ‰から-170 ‰の範囲で十年規模の変動を示した. 1362~1662年の期間のδD変動は別府湾のアルケノン水温変動と対応しており,別府湾水温が高いとき,δD値が高い傾向がみられた.別府湾の水温が太平洋十年規模変動に対応していることを考えると,水月湖コアに記録されている長鎖n-脂肪酸δDの変動は太平洋十年規模変動に応答した降水同位体比の変動を反映している可能性が高い.名古屋での降水の同位体比は梅雨前線の位置の影響を受け,名古屋よりも北側で梅雨前線が停滞している時に高く,南側で停滞しているときには低くなることが報告されている(Kurita et al., 2015 Climate of the Past).1362~1662年の期間では, PDOが負の時(別府湾水温が高いとき),梅雨前線の平均的位置が北上していたことが推察された.