日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS11] 水惑星学

2019年5月28日(火) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:関根 康人(東京工業大学地球生命研究所)、臼井 寛裕(東京工業大学地球生命研究所)、福士 圭介(金沢大学環日本海域環境研究センター)、渋谷 岳造(海洋研究開発機構)

[MIS11-P08] 海洋リソスフェアにおける沈み込み開始の数値シミュレーション実験:含水鉱物のレオロジー特性の効果

*和泉 美希1吉田 晶樹2平内 健一1 (1.静岡大学理学部地球科学科、2.国立研究開発法人海洋研究開発機構 地球深部ダイナミクス研究分野)

キーワード:プレートテクトニクス、沈み込み開始、含水鉱物、海洋リソスフェア、アンチゴライト、滑石

地球におけるプレートの沈み込みがどのように始まったのかということは未だわかっていない。沈み込み開始に関する数値シミュレーション実験の先行研究では、沈み込みを再現させるために既存の断層(弱面)の摩擦係数(μ)を約0に設定しているが、これは一般的な岩石・鉱物に用いられるバヤリー則の値(μ = 0.6~0.85)と比較しても極端に小さく、現実的に定められた値ではない。ところで、プレートテクトニクスが起こっていない他の地球型惑星と地球の表層環境を比較すると、大きな違いとして海洋の有無が挙げられる。海水がプレート間の断層に沿って深部まで移動するとき、水と断層帯の鉱物が反応して力学的に弱い含水鉱物が形成されると考えられる。そこで本研究では、含水鉱物のレオロジー特性に注目し、地球の海洋リソスフェアにおける沈み込み開始の2次元の数値シミュレーション実験を行った。その結果、弱面の力学的条件について含水鉱物であるアンチゴライトの流動則(転位クリープ)と滑石の摩擦係数(μ = 0.1)を考慮し、かつ異常間隙水圧(λ = 0.9)である場合にのみ、プレートの沈み込みが開始することがわかった。さらに、本研究のモデルにおける沈み込み開始可能な弱面の最大平均強度は5 MPa程度であることが示唆された。また、本研究のモデルでは、海洋リソスフェアがマントル深部まで沈み込む安定した沈み込みは起こらなかったが、これはプレートの沈み込み開始とその後のマントル深部への沈み込みにはそれぞれ別の効果が存在することを示唆している。