[MIS11-P17] マグネシウム型スメクタイトの膨張挙動
森田 康暉、福士 圭介、佐久間 博
スメクタイトは液体の水の存在下で生成される粘土鉱物である。スメクタイトの構造は四面体シートと八面体シートで2:1の層を作り、その層間に接触している水中の陽イオンを取り込む性質がある。この層間陽イオン種は主にNa+、K+、Mg2+、Ca2+が 一般的な層間陽イオンである。乾燥状態では層間陽イオン種と相対湿度(RH)に応じて層間に水を保持し、保持水分に応じて001面の面間隔は9~15Åまで変化する。RH0%で、層間陽イオン種がNa+、K+の時に面間隔は約10Å、Ca2+では約12Å、Mg2+では約11~14Åになる(Sato et al, 1992; Morodome and Kawamura 2009)。スメクタイトは組成と構造に応じて、2八面体型のモンモリロナイトやノントロナイトなど、3八面体型のサポナイトなどにさらに分類される。
現在NASAが遂行しているミッションの一つにMSL(Mars Science Laboratory)という計画がある。この計画では探査機キュリオシティを火星に送り込み、生命の存在していた可能性や生命に育むに適した環境を調査している(Vaniman et al, 2014)。この環境の条件の一つとしてかつて存在していた水が挙げられる。水は生命にとって重要なものである。それ故に水の存在下で生命存在可能性を評価するためには、その水質に左右され、水質を知ることが重要である。キュリオシティはかつての湖沼が存在したと考えられるゲイルクレーターに着陸し、湖沼堆積物のドリルサンプリングを行い、火星の鉱物の同定や定量分析に用いられるChemistry & Mineralogy X Ray Diffraction(CheMin-XRD)や土壌や岩石中の化学元素の存在量を測定できるAlpha Particle X-Ray Spectrometer (APXS)などを用いて測定している。これらのデータから水環境の推定を行っている。Fig 1にシープベッド泥岩層のJohnKleinとCumberlandサイトで得られたCheMin-XRDの結果を示す。装置内の温度は5~25℃で相対湿度(RH)は0%で、二酸化炭素雰囲気で測定している。001面のピーク位置は13.2Åを示す。上記したように、スメクタイトの面間隔は層間に挿入される陽イオン種と相対湿度(RH)によって変化するため、Na+、K+、Ca2+の挿入では説明ができない。そのため、層間にはMgOH+、あるいはMg2+が挿入されているということが現在議論されている。Fig 2に2θ22°付近のCheMin-XRDの拡大データを示す。02l面のピーク位置よりシープベッド泥岩層のスメクタイトはサポナイトであることが推測されている。(Vaniman et al, 2014; Bristow et al, 2015)。
様々なRH条件下でMg2+型サポナイトの面間隔を測定したSuquet et al, 1975がRH0%で11.4Åを示すために、Vaniman et al, 2014、Bristow et al, 2015は火星のCumberlandのサポナイトはMgOH+型であると論じている。しかし、Pevear et al, 1991によると、地球上ではMgOH+型スメクタイトは200℃のアルカリ熱水でなければ生成されず、推定されているゲイルクレーター湖沼堆積物の生成条件とは一致しない。さらに、MgOH+型スメクタイトの面間隔がそもそも13Åを示すような実験研究はない。また、参考にしたSuquet et al, 1975は約40年前のデータで古く、実験的な信頼性にやや疑問が残る。RH0%でのNa+、Ca2+、他のMg2+型スメクタイトの面間隔をレビューしたものをFig 3に示す。Na+型スメクタイトは約10Å、Ca2+型スメクタイトは約12Åに面間隔が集まるが、Mg2+型スメクタイトは大きくばらついていることがわかる。先行研究のMg2+型サポナイトの面間隔は12Å以下だが、他のMg2+型スメクタイトでは13.2Åを超えるものもある。各先行研究の測定条件についてまとめたものをTable 1に示す。まず、Suquet et al, 1975だけ測定手法が異なっている。Suquet et al, 1975が採用したQuenched法はサンプルを測定器とは別の容器で平衡させ、取り出した後、密封容器に入れ、XRD測定する手法であると推測される。一方、In situ法は測定器内でRHをコントロールしてXRD測定する手法である。さらに、測定を行うときのRHコントロールをする大気組成が異なっている。面間隔はSuquet et al, 1975では11.4Å、硫酸条件では12.0Å、空気条件では13.2~13.9Å、窒素条件では12.0~13.0Åであり、手法及び大気組成によって面間隔が変化する可能性がある。よって本研究では窒素、空気、主要な火星大気である二酸化炭素雰囲気で湿度コントロールしたときのRH0%における様々なMg2+型スメクタイトの膨張挙動を検討することを目的とする。
現在NASAが遂行しているミッションの一つにMSL(Mars Science Laboratory)という計画がある。この計画では探査機キュリオシティを火星に送り込み、生命の存在していた可能性や生命に育むに適した環境を調査している(Vaniman et al, 2014)。この環境の条件の一つとしてかつて存在していた水が挙げられる。水は生命にとって重要なものである。それ故に水の存在下で生命存在可能性を評価するためには、その水質に左右され、水質を知ることが重要である。キュリオシティはかつての湖沼が存在したと考えられるゲイルクレーターに着陸し、湖沼堆積物のドリルサンプリングを行い、火星の鉱物の同定や定量分析に用いられるChemistry & Mineralogy X Ray Diffraction(CheMin-XRD)や土壌や岩石中の化学元素の存在量を測定できるAlpha Particle X-Ray Spectrometer (APXS)などを用いて測定している。これらのデータから水環境の推定を行っている。Fig 1にシープベッド泥岩層のJohnKleinとCumberlandサイトで得られたCheMin-XRDの結果を示す。装置内の温度は5~25℃で相対湿度(RH)は0%で、二酸化炭素雰囲気で測定している。001面のピーク位置は13.2Åを示す。上記したように、スメクタイトの面間隔は層間に挿入される陽イオン種と相対湿度(RH)によって変化するため、Na+、K+、Ca2+の挿入では説明ができない。そのため、層間にはMgOH+、あるいはMg2+が挿入されているということが現在議論されている。Fig 2に2θ22°付近のCheMin-XRDの拡大データを示す。02l面のピーク位置よりシープベッド泥岩層のスメクタイトはサポナイトであることが推測されている。(Vaniman et al, 2014; Bristow et al, 2015)。
様々なRH条件下でMg2+型サポナイトの面間隔を測定したSuquet et al, 1975がRH0%で11.4Åを示すために、Vaniman et al, 2014、Bristow et al, 2015は火星のCumberlandのサポナイトはMgOH+型であると論じている。しかし、Pevear et al, 1991によると、地球上ではMgOH+型スメクタイトは200℃のアルカリ熱水でなければ生成されず、推定されているゲイルクレーター湖沼堆積物の生成条件とは一致しない。さらに、MgOH+型スメクタイトの面間隔がそもそも13Åを示すような実験研究はない。また、参考にしたSuquet et al, 1975は約40年前のデータで古く、実験的な信頼性にやや疑問が残る。RH0%でのNa+、Ca2+、他のMg2+型スメクタイトの面間隔をレビューしたものをFig 3に示す。Na+型スメクタイトは約10Å、Ca2+型スメクタイトは約12Åに面間隔が集まるが、Mg2+型スメクタイトは大きくばらついていることがわかる。先行研究のMg2+型サポナイトの面間隔は12Å以下だが、他のMg2+型スメクタイトでは13.2Åを超えるものもある。各先行研究の測定条件についてまとめたものをTable 1に示す。まず、Suquet et al, 1975だけ測定手法が異なっている。Suquet et al, 1975が採用したQuenched法はサンプルを測定器とは別の容器で平衡させ、取り出した後、密封容器に入れ、XRD測定する手法であると推測される。一方、In situ法は測定器内でRHをコントロールしてXRD測定する手法である。さらに、測定を行うときのRHコントロールをする大気組成が異なっている。面間隔はSuquet et al, 1975では11.4Å、硫酸条件では12.0Å、空気条件では13.2~13.9Å、窒素条件では12.0~13.0Åであり、手法及び大気組成によって面間隔が変化する可能性がある。よって本研究では窒素、空気、主要な火星大気である二酸化炭素雰囲気で湿度コントロールしたときのRH0%における様々なMg2+型スメクタイトの膨張挙動を検討することを目的とする。