[MIS12-P08] 北海道胆振東部地震(2018年9月6日)で形成された噴砂の構造と構成物
キーワード:液状化、噴砂、古地震
2018年9月6日に発生した北海道胆振東部地震(M6.7)では,震源から約20 km離れた苫小牧市,厚真町,むかわ町の太平洋岸に液状化による噴砂が多数出現した.我々はこの海岸付近の埋立地や河口周辺の低地に形成された噴砂について,堆積物の分布,形,堆積構造および構成物の特徴を調べた.地表に現れた噴砂丘の直径は数十cmから数mで,噴出口が単独のもののほか,いくつかが連結されたものも見られた.また,割れ目から噴出した噴砂も存在した.噴砂丘の構成物は砂,泥,礫,軽石である.断面には層構造が認められ,下位から泥,軽石,砂の順で重なっているものが多い.砂と軽石を含む混合層が地震よって液状化した際,層内で砂と軽石が分離し,上位に集まった軽い粒子から順に噴出したことが示唆される.砂脈については,ピットを掘るかジオスライサーを用いて浅部のみを観察した.砂脈は幅は1mmから10cm程度で,ほとんどがカーブしていたり複雑に折れ曲がったりしている.噴砂丘と砂脈を観察すると,上昇してきた軽石や砂礫が細い管や割れ目の中で詰まり,その後は通り抜けた細粒の粒子のみが地表に噴出した様子がよくわかった.このように,噴砂丘と砂脈の構造は,液状化層を構成する粒子の粒径や比重の特性を反映して複雑なものとなる.今回の観察事実は,液状化と噴砂のプロセスの理解を深めることだけでなく,液状化の痕跡として利用されることが多い地層中の噴砂堆積物を識別し評価する上でも役立つと考えられる.