日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS13] 生物地球化学

2019年5月27日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:木庭 啓介(京都大学生態学研究センター)、柴田 英昭(北海道大学北方生物圏フィールド科学センター)、大河内 直彦(海洋研究開発機構)、山下 洋平(北海道大学 大学院地球環境科学研究院)

[MIS13-P05] 硫酸イオンの溶出フラックスと主成分分析による広島市内太田川派川のヘドロ化の推定

板村 弘貴1、*横尾 頼子1 (1.同志社大学理工学部)

キーワード:感潮河川、溶出フラックス、主成分分析、有機泥

感潮河川である太田川派川において,河川水と間隙水中の元素濃度を測定し,河川水中の環境因子について複数の測定データを総合的に解釈できる主成分分析を用いて,ヘドロ化が起きている地点の推定を試みた.
調査地は太田川水系のうちの4河川(元安川,本川,天満川,太田川放水路)における13地点である.2018年8月30日,31日に各地点で広島湾の潮位が高い時と低い時の2回河川水と河床堆積物を採取した.堆積物は生試料の密度と乾燥後の重量を測定した.河川水と間隙水はpHを測定し,孔径0.2µmメンブレンフィルターで過し,イオンクロマトグラフィーとICP質量分析計を用いて主要イオン,FeおよびMnの濃度を測定した.
間隙水-河川水における主要陽イオンとSO42-の溶出フラックスJSO4を計算したところ,全地点において,JCaとJSO4は正の相関を示した.JSO4が負の値を示す地点においてJSO4とJCaはより強い正の相関を示した.堆積物中でSO42-の還元が起きることによって,間隙水中のSO42-が減少しフラックスが負になったと考えられる.したがって,これらの地点ではヘドロ化が起きている可能性がある.河川水と堆積物の間において,ヘドロ化,つまりH2Sの発生のもととなるSO42-の挙動は,海水に多く含まれるNa+,K+,Ca2+およびMg2+のうちCa2+の挙動と似ていると考えられる.
JSO4が負である地点について,Ca2+の溶出フラックスJCa,JSO4,含水比w,空隙率φ,塩分,間隙水のpH,間隙水中のMnおよびFe濃度の8変数を用いて主成分分析を行った.主成分分析によって得られた8つの主成分のうち解釈すべき主成分は分散より第2主成分までと判断した.主成分負荷量について,第1主成分はFe,JCa,JSO4,φおよびMnが正,第2主成分はw,pH,JSO4,およびJCaが正であった.したがって,第1主成分は酸化還元状態の指標,第2主成分はヘドロ化の進行の指標であると解釈できる.主成分得点の結果から,第1主成分が負,第2主成分が正である領域では堆積物中の還元はSO42-からFeSの生成よりもさらにSO42-からH2Sの発生まで起きていると考えられ,ヘドロ化が推定される.