日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS13] 生物地球化学

2019年5月27日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:木庭 啓介(京都大学生態学研究センター)、柴田 英昭(北海道大学北方生物圏フィールド科学センター)、大河内 直彦(海洋研究開発機構)、山下 洋平(北海道大学 大学院地球環境科学研究院)

[MIS13-P06] 多層化された陸面過程モデルBEAMSによる土壌内部のエネルギー・水・炭素動態の評価

*小宮山 敬介1佐々井 崇博1 (1.東北大学大学院理学研究科)

キーワード:陸域炭素循環、陸面過程モデル、土壌炭素動態

気候変動に伴い土壌から大気への炭素放出量は増加する可能性が指摘されている。温暖化に対する土壌炭素動態の応答が注目されているが、土壌内部の構成プロセスは複雑であるために科学的理解が十分ではなく、モデル高度化が不可欠とされる。特に、土壌内部の素過程の再現性が課題であり、定性的・定量的な理解を進めることが必要である。土壌内部の炭素動態をコントロールする主な項目として、地温、土壌水分量、土壌凍結量がある。これまで、詳細な水文モデルと炭素モデルを密にリンクさせて、これらの項目が地下の炭素にどう応答するかを調べた研究はなかった。そこで、本研究では、既存の陸域生態系モデルBiosphere model integrating Eco–physiological And Mechanistic approaches using Satellite data (BEAMS) (Sasai et al., 2016)に詳細な水文モデルを統合し、新たな陸面過程モデルへ発展させて土壌炭素分解速度を解析した。
1982年から2011年の期間、全球1°グリッドでモデル実験を実施した。その結果、全球平均の土壌炭素分解速度はモデル実験期間を通じて増加傾向を示した。土壌の感度実験では、増加傾向の16%が主要3項目によって引き起こされていることがわかった。土壌の深さ(上層(0.00m~0.05m)、中層(0.05m~0.30m)、下層(0.30m~1.00m))に対する感度実験では、上層、中層、下層がそれぞれ8.1%、5.7%、2.2%の土壌分解速度を増加傾向に導くことがわかった。全球平均で下層の効果は上層や中層の効果と比べ小さく、地下の土壌炭素は、表層の土壌炭素に比べて熱・水環境の変化の影響が小さいことを表した。しかし、空間分布をみると、北半球の寒冷地域やアフリカ南部の草原など、地域的には下層の効果が大きな領域があった。下層の湿潤化や土壌凍結量の減少により深い層の土壌炭素が大気へ放出されており、これらの領域では、深い層において気候変動に対する土壌炭素の役割が重要だと考えられる。