[MIS16-P08] 気象レーダーを用いた汎用的噴煙解析手法の開発
キーワード:火山噴煙、気象レーダー、桜島火山
気象研究所と鹿児島地方気象台は、気象レーダーを用いた噴煙の汎用的解析手法に関する研究に取り組んでいる。火山学の中では噴煙のレーダー解析は少数のため、特にレーダー気象学の初学者向けに汎用的解析ツールの開発を行っている。気象庁における火山の噴煙観測は、主に遠望カメラの画像に映る噴煙を解析することで行われているため、気象条件によっては噴煙の観測は不可能になるという状態にある。レーダーデータによる噴煙の解析が容易になれば、雲などにより火口付近の視界が悪い場合でも即時的な噴煙の観測を行うことが可能になり、噴火に関する情報をより正確に得られることが期待される。本発表では、ツール開発の概要と事例解析結果について述べる。
ツールの開発については、気象研究所で開発されたレーダー解析ソフト“Draft”を用いる。Draftはレーダーデータのフォーマット変換やレーダーの解析、描画までを行うコマンド群からなっている。これらのコマンド群を適切に利用すればレーダーデータから噴煙エコーを解析することは可能であるが、レーダー気象学、またDraftそのものにあまり触れたことがない場合には解析は容易ではない。そのため、これらのコマンドや他のプログラム等を組み合わせ、レーダーデータの入手から解析結果の描画までをほぼ自動的に行うことで容易に噴煙の状態を把握できるようなツールの開発を目標としている。
事例解析としては、2017年11月13日に桜島の南岳山頂火口で起きた噴火を対象に行った解析例を紹介する。この噴火に伴う噴煙は、山頂付近を覆う雲のため目視及び遠望カメラでは観測ができなかった。しかし、桜島にある有村観測坑道伸縮計(大隅河川国道事務所)の火口方向と直交する方向の成分で観測された山体の収縮を示す変化量を見ると、2018年6月16日に南岳山頂火口で発生した噴煙が海面高度約5700mまで上がった噴火に伴う変化量と同程度であり、熱的な条件が整えば同程度の高度まで噴煙が上がったとしても不思議ではない。この事例を気象庁の現業レーダーである種子島レーダー及び福岡レーダー(Cバンド単偏波ドップラー気象レーダー)のデータを用いて解析した結果、反射強度の分布から噴煙は海面高度4.5~6km程度まで上昇し、10分程度その高度を維持していたことが確認できた。2017年の桜島において噴煙高度が海面上5km程度まで上がった噴火は、昭和火口で起きた5月2日の噴火のみであり、同年では最大規模の噴火であった可能性がある。また、種子島レーダーでは反射強度に二つの空間的なピークが見られる時間帯があった。一方は水滴の付着や凝集によって、反射強度が高まった可能性がある。この事例については、国土交通省のXRAIN等他のレーダーデータを用いた解析も行う予定である。
結果として、雲により噴煙が見えない状況下での、気象レーダーによる噴煙解析ツールの有効性が示された。このツールによって、全天候下での即時的な噴煙解析が可能となることが期待される。しかし課題となる点もある。今回用いた気象庁レーダーの時間分解能が5分程度であり、噴煙量が少なく継続時間が数分程度の規模の噴火では確からしい噴煙高度を求めることができない可能性がある。以後は引き続きツールの開発を実施すると共に、事例解析を進めつつ解析手法の高度化を目指したい。
ツールの開発については、気象研究所で開発されたレーダー解析ソフト“Draft”を用いる。Draftはレーダーデータのフォーマット変換やレーダーの解析、描画までを行うコマンド群からなっている。これらのコマンド群を適切に利用すればレーダーデータから噴煙エコーを解析することは可能であるが、レーダー気象学、またDraftそのものにあまり触れたことがない場合には解析は容易ではない。そのため、これらのコマンドや他のプログラム等を組み合わせ、レーダーデータの入手から解析結果の描画までをほぼ自動的に行うことで容易に噴煙の状態を把握できるようなツールの開発を目標としている。
事例解析としては、2017年11月13日に桜島の南岳山頂火口で起きた噴火を対象に行った解析例を紹介する。この噴火に伴う噴煙は、山頂付近を覆う雲のため目視及び遠望カメラでは観測ができなかった。しかし、桜島にある有村観測坑道伸縮計(大隅河川国道事務所)の火口方向と直交する方向の成分で観測された山体の収縮を示す変化量を見ると、2018年6月16日に南岳山頂火口で発生した噴煙が海面高度約5700mまで上がった噴火に伴う変化量と同程度であり、熱的な条件が整えば同程度の高度まで噴煙が上がったとしても不思議ではない。この事例を気象庁の現業レーダーである種子島レーダー及び福岡レーダー(Cバンド単偏波ドップラー気象レーダー)のデータを用いて解析した結果、反射強度の分布から噴煙は海面高度4.5~6km程度まで上昇し、10分程度その高度を維持していたことが確認できた。2017年の桜島において噴煙高度が海面上5km程度まで上がった噴火は、昭和火口で起きた5月2日の噴火のみであり、同年では最大規模の噴火であった可能性がある。また、種子島レーダーでは反射強度に二つの空間的なピークが見られる時間帯があった。一方は水滴の付着や凝集によって、反射強度が高まった可能性がある。この事例については、国土交通省のXRAIN等他のレーダーデータを用いた解析も行う予定である。
結果として、雲により噴煙が見えない状況下での、気象レーダーによる噴煙解析ツールの有効性が示された。このツールによって、全天候下での即時的な噴煙解析が可能となることが期待される。しかし課題となる点もある。今回用いた気象庁レーダーの時間分解能が5分程度であり、噴煙量が少なく継続時間が数分程度の規模の噴火では確からしい噴煙高度を求めることができない可能性がある。以後は引き続きツールの開発を実施すると共に、事例解析を進めつつ解析手法の高度化を目指したい。