日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS17] 歴史学×地球惑星科学

2019年5月27日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:加納 靖之(東京大学地震研究所)、芳村 圭(東京大学生産技術研究所)、磯部 洋明(京都市立芸術大学美術学部)、岩橋 清美(国文学研究資料館)

[MIS17-P14] 古日記データ同化による歴史天候の復元

*芳村 圭1Neluwala Panduka2市野 美夏3増田 耕一4平野 淳平5 (1.東京大学生産技術研究所、2.University of Peradeniya 、3.国立情報学研究所、4.首都大学東京、5.帝京大学)

キーワード:古日記、データ同化、天候復元

気候変動のメカニズムを理解するうえで長期の大気再解析データは欠かせないが、現在の最長データは130年間余りである。それ以上過去に遡れていない原因としては直接の気象観測データの不足によるものが大きい。ただし、近代的な気象観測データが存在しない過去にも、古文書に記載された日々の天気情報が長期間にわたって存在している場合がある。日本はいわばそのような古い天気情報の宝庫と言える。本研究では、それらの古い天気情報を最新のデータ同化システムに投入する手法を開発し、大気状態の拘束条件としての効果を調べ、既存の再解析データをより過去に延長する手法を提案する。観測データ、予測モデル、データ同化スキームとして、それぞれ歴史天候データベース、全球スペクトルモデル、局所アンサンブル変換カルマンフィルタを使用したシステムを構築した。天気を示すアナログ情報は、3から5段階程度に分類して、雲量割合や地表面下向きの短波放射と対応させることが良く、アンサンブル数は30程度が計算効率と精度の兼ね合いから適切ということがわかった。以上の設定を用いて、現代(1990年代)を対象として、18地点の気象観測所で得られた天気情報を与えたデータ同化結果が、与えない結果に比べて現代の再解析データにどれほど近づいたかで結果を評価した。その結果、短波放射量及び雲量に大きな改善が見られ、降水量にも有意な改善が確認された。これらの改善は、日本の春季・秋季に特に顕著な総観規模での気圧配置の変遷を適切に拘束できたためにもたらされたと考えられる。さらに、無降水日情報を観測項目としてデータ同化に加えると、降水量の精度が上がることが確認された。その上で実際の古日記データを用いた1830年代、1860年代の実験を行った。横浜で実際に観測された1860年代の気温と降水量と比較して、類似した季節変化及び年々変動が得られることが確認できた。