日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS19] 古気候・古海洋変動

2019年5月30日(木) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:岡崎 裕典(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、岡 顕(東京大学大気海洋研究所)、加 三千宣(愛媛大学沿岸環境科学研究センター)、長谷川 精(高知大学理工学部)

[MIS19-P18] 複数の古海洋モデルによって駆動した海洋循環モデルで推定されたLGMの黒潮の比較

*市川 兼匠1楊 海燕2郭 新宇2宮澤 泰正3 (1.愛媛大学 大学院 理工学研究科、2.愛媛大学沿岸環境科学研究センター、3.独立行政法人海洋研究開発機構)

キーワード:最終氷期最盛期、黒潮、古気候モデル

1.はじめに
 日本周辺海域を流れる黒潮は日本や東アジアの気候形成に重要な役割を果たしている. 現代では,黒潮そのものは概ね安定的に存在しているが,より長い時間スケールで見れば激変する地球システムの一部であり,現代の安定的な姿も変貌する様子のワンシーンに過ぎない.最終氷期最盛期(LGM)と言われる約2万年前は現代と環境が大きく異なっており,氷床の発達による海水準低下,偏西風の南下,日射量の変化による大気海洋間の熱フラックスの変化が考えられる.そのため,当時の黒潮を推定する際は,上記の3要素を併せて考慮する必要がある.
武藤(2018)では上記の3要素を導入した海洋大循環モデルを用いて,LGM中の黒潮流路や流速を推定した.その結果,黒潮続流の南下と流量の減少が見られた.しかし,武藤(2018)は1つの古気候モデル(IPSL)を用いた計算から得られたものである.過去の黒潮をより高い再現度で推定するためには,より多くの古気候モデルを用いて同様の計算を行い,過去の平均的な黒潮を推定する必要がある.
 今回はCNRM,GISS,MIROC,MRIを用いて同様の計算を行い,過去の黒潮の推定を行う.計算を行う前に黒潮の流路に影響を与えると考えられる風応力の渦度とスベルドラップ流量について比較した.

2.海洋大循環モデル
 海洋大循環モデルはJAMSTECで開発された北太平洋海洋大循環モデル(Miyazawa et al, 2009)を使用した.モデル領域は,南緯30度から北緯60度,東経100度から西経70度である.解像度は,水平方向に1/4度,鉛直方向にσ座標系で21層である.初期値として年平均水温と年平均塩分を与え,外力として風応力および海表面熱フラックスを与えて駆動している.計算期間は40年間であり,解析には40年目の結果を使用した. 海水準低下は海洋大循環モデル内の水深を変化させることで対応した.LGMの風応力および海表面熱フラックスは,各古気候モデルのデータを使用することで対応した.

3.結果
 IPSL,CNRM,GISS,MIROC,MRIの5つの古気候モデルの渦度を比較した結果,先行研究で使用されたIPSLに比べ他の古気候モデルはの位置が北寄りであった.先行研究よりの位置の変化と偏西風のピークの変化がおおよそ一致することが示唆されているため,渦度からIPSLが最も偏西風の南下が見られると考えられる.スベルドラップ流量を比較した結果,北緯24度における太平洋西岸のスベルドラップ流量の値がIPSLで最も低い値となった.渦度とスベルドラップ流量の比較から,IPSLを用いた計算結果が最も黒潮の流路の南下と弱化が見られると考えられる.
 発表時には各古気候モデルを用い,推定されるLGMの黒潮について紹介する.