日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS20] 山の科学

2019年5月27日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:鈴木 啓助(信州大学理学部)、苅谷 愛彦(専修大学文学部環境地理学科)、佐々木 明彦(国士舘大学文学部史学地理学科 地理・環境コース)、奈良間 千之(新潟大学理学部理学科)

[MIS20-P06] 白馬大雪渓周辺における近年の岩盤斜面の地形変化

*杉山 博崇1奈良間 千之2井上 公3 (1. 新潟大学大学院自然科学研究科、2.新潟大学理学部理学科フィールド科学人材育成プログラム、3.防災科学技術研究所)

キーワード:落石、岩盤崩落、白馬大雪渓、空撮、SfM

白馬大雪渓は,白馬岳に通じる,年間1万人以上の登山者が通過する人気の登山ルートであるが,白馬岳と杓子岳の両岩壁に囲まれており,岩壁で生産される落石や崩落により毎年のように登山事故が起きている(小森, 2006). 2005年8月には杓子岳北面の岩壁で崩落が生じ,2名の死傷者がでた(苅谷ほか,2008).さらに2008年8月には大雪渓の左岸斜面で崩落が発生し,登山者2名が犠牲になっている.白馬大雪渓の落石分布はドローンによって調査されている.落石が雪渓上に集中して堆積する場所は決まっており,その季節ごとの礫数は,その年の積雪深により岩盤斜面が露出する時期で異なる(畠・奈良間,2017).また,大雪渓周辺の落石や崩落で堆積した未固結堆積物は,土石流となり大雪渓表面を流下する事例も報告されている(松元ほか,1998 ; 石井・小疇,1999).
これら土砂移動に関わる地形災害を防ぐには,斜面変化の地形過程を詳細に調査し,そこで生じる岩盤変化や土砂移動の実態を把握することが重要である.そこで,本研究では,ドローンやセスナから取得した空撮画像とSfMソフトを用いて白馬大雪渓周辺の岩壁斜面の3次元地形モデルを作成し,岩盤の崩落箇所を抽出するとともに,その崩落の地形場の特徴を明らかにすることを試みた.また,白馬岳側と杓子岳側の雪渓上の落石を比較し,地質の異なる岩盤から生産された礫のサイズや分布について検討した.
杓子岳側の珪長岩の岩壁では,1976年~2018年の点群データの比較から,2005年に崩落が発生した岩壁の崩落箇所を特定した.2時期の斜面縦断プロファイルから,崩落箇所で,高さ約60m,厚さ約10mの斜面後退を確認した.さらに,この場所では,2016年~2018年の比較から,周囲よりも節理が密に発達した箇所で斜面は後退しており,後退した部分の上部はオーバーハングの形態である.また,岩盤の谷筋に堆積した礫の移動がみられ,谷筋の谷頭部では植生被覆の面積が変化していた.2005年の崩壊によって形成された岩盤基部の堆積提は,その後侵食されているのを確認した.
白馬岳側の珪長質凝灰岩の岩壁では,2011年~2018年の点群データの比較から,後退していた箇所を確認し,実際に2016年6月に現地で崩落を目撃した場所と一致した.また,植生が見られなかった砂礫地においても侵食を確認した.過去のドローン空撮画像をみると,この砂礫地は植物が生育する時期に雪が融け切らず残っている残雪砂礫地であった.杓子岳側谷斜面でみられた谷筋の侵食は,白馬岳側谷斜面では確認されなかった.
白馬岳側と杓子岳側ともに大雪渓上流部に堆積した礫は約2m以下で,礫のサイズ分布に差はないが,杓子岳側のほうが礫数はかなり多く,崖錐が形成されていた.