[MIS20-P10] 森林限界の樹木4種における細根系の水および炭素利用様式の解明
キーワード:水分生理、細根、透水性、日中水ポテンシャル、森林限界
細根は,樹木の生存に欠かせない養水分の吸収を担っている.山岳域における樹木の生存境界である森林限界は,低温,乾燥および冬季の土壌凍結などにより樹木にとって水利用が厳しい環境である.根は樹種の系統や共生菌の違いによって生存戦略が異なることが示唆されていることから,森林限界に生育する種間で水および炭素の利用における戦略の違いがあると考えた.本研究では,森林限界に生育する樹木の細根系の水吸収・輸送を解明するため,乗鞍岳の森林限界である標高2,500 mに優占する落葉広葉樹のナナカマド(Sorbus commixta)およびダケカンバ(Betula ermanii),常緑針葉樹であるオオシラビソ(Abies mariesii)およびハイマツ(Pinus pumila)の細根系の透水性,日中の水ポテンシャル,呼吸,形態特性および解剖特性を評価した.4樹種の根透水性の値の範囲は1.17~4.02×10-4 m s-1 MPa-1で有意な種間差がみられ,ハイマツが他の3樹種よりも有意に高かったことから,ハイマツは水を通しやすい根をもっていることが明らかになった.4樹種の日中の水ポテンシャル値の範囲は-0.20~-0.12 MPaであり,種間差はみられなかったが,日中の水ポテンシャルの最小値はハイマツの根で最も低かった.ハイマツの根は,P-V曲線法による予備的な調査結果から浸透調節能が高いことも示唆されており,日中水ポテンシャルを下げることで積極的に吸水を行っている可能性が考えられた.本発表では,根呼吸,根形態および根解剖特性と根水分特性の関係性も踏まえて考察する.