日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS20] 山の科学

2019年5月27日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:鈴木 啓助(信州大学理学部)、苅谷 愛彦(専修大学文学部環境地理学科)、佐々木 明彦(国士舘大学文学部史学地理学科 地理・環境コース)、奈良間 千之(新潟大学理学部理学科)

[MIS20-P17] 2017年8月4日にラダック,アチナータン村で生じた氷河湖出水

早乙女 真穂2、*奈良間 千之1櫻井 尚輝2 (1.新潟大学理学部フィールド科学人材育成プログラム、2.新潟大学大学院自然科学研究科)

キーワード:氷河湖、氷河湖決壊洪水、土石流、ラダック山脈

インド北西部に位置するヒマラヤ西部のラダック山脈では,近年氷河湖からの出水で生じた洪水被害が多数報告されている.この地域の氷河湖は,巨大な氷河湖を有するヒマラヤ東部(ブータンとネパール東部)の氷河湖決壊洪水とは異なり,氷河湖は非常に小規模であるがその被害は大きい特徴をもつ.2017年8月4日,ラダック山脈北西部に位置するアチナータン谷において,大規模な土石流が発生した.当日の降雨はなく,数十回も及ぶ間欠性の段波が流下した瞬間を多くの村人が目撃した.この災害では,男女合わせ4名の死者がでており,橋の全壊,インダス川沿いの畑や店の沈水などの甚大な被害がでている.土石流の翌日に村人が氷河湖を訪れ,土石流の誘因は谷の上流に位置する氷河湖の出水であることはわかっているが,どのようにして出水し,大規模な土石流に発達したかという詳細な情報は不明である.そこで本研究では,現地調査(2017年と2018年)と衛星画像解析からアチナータン谷で発生した氷河湖出水と土石流の発生・発達の詳細を明らかにすることを試みた.
 衛星画像解析の結果,氷河湖の面積は2016年11月14日に0.003km²であったが,2017年7月7日に0.012km2,7月27日に0.022km2まで拡大し,出水後の8月18日に0.01km2まで減少している.2017年の春~初夏にかけて氷河湖の体積は162,000m3増加し,そのうちの7割は7月7日~27日の20日間で増加しており,156,000m3の湖水が出水した.現地調査では,氷河湖前面の埋没氷を含むモレーン内部に発達するアイストンネルを確認し,この氷河湖は短期間で拡大・出水した短命氷河湖であり,氷河前面のモレーン内部に発達したトンネルを通って湖水が出水していた.