日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS27] 大気電気学:大気電気学研究の自然災害軽減への応用

2019年5月28日(火) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:芳原 容英(電気通信大学 大学院情報理工学研究科)、鴨川 仁(東京学芸大学教育学部物理学科)

[MIS27-P04] 熱帯降雨観測衛星TRMMからの雷の光学観測を用いた雷の電気エネルギー導出に関する研究

*平田 浩大1芳原 容英1菊池 博史1 (1.電気通信大学)

雷に関する研究は250年以上以前から行われており,現在までに多くの科学的な発見がなされている.雷は地球規模で発生する大気中の電気現象であり,その電気的特性は雷放電現象を物理的,光学的に理解するために非常に大切なパラメータである.落雷電荷モーメントQdsは雷の電気的特性のうち雷のエネルギーの大きさを表すことができるパラメータであり,その大きさは雷による風力発電所の風車の破損や電力線の用船といった地上設備への被害や山火事などの自然災害の被害に影響を与えることが分かりつつある.このQdsの導出について,雷放電が発生する際に放射される電磁波を地上観測施設から観測することでQdsを遠隔導出できる方法があり,とりわけ,低周波のELF帯の周波数領域に現れるELF帯トランジェントを観測することでQdsを推定する研究が進んでいる.さらに近年,国際宇宙ステーションISSに搭載された光学観測機器フォトメタPHにより雷の発光強度とQdsの対応を調査することで雷放電の発光の強さからQdsの推定を行う研究が行われている.この方法では,世界中で発生した雷放電について全球にわたって一様な精度でQdsを算出できることが期待されている.しかし,PHの運用期間は3年間と短いため長期間の統計には向いていない.そこで,本研究においては,1997年~2015年までの19年間運用されていた熱帯降雨観測衛星TRMMに搭載されていた雷光学観測機器であるLISから得られた雷発光強度のデータとELF帯電磁波系地上観測データから得られた落雷電荷モーメントQdsの間の相関関係を導出して全球に渡る光学観測にわたる光学観測によるQdsの導出可能性の調査を行った.

 実際に解析を行った結果,雷発光強度と落雷電荷モーメントQdsの間には相関係数0.9程度の強い正の相関があることが示された.このことから,雷発光強度の値から落雷電荷モーメントQds推定が期待できることが示された.今後は,,雷発光強度からの落雷電荷モーメントQds導出の精度向上の工夫を行い,また,19年間にわたるLISによる雷の光学観測のデータをもとに世界雷の落雷電荷モーメントQdsの時空間分布を導出しその特性を調査する.