日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-TT 計測技術・研究手法

[M-TT47] 人新世における高精細地形・地球物理データの活用

2019年5月27日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:早川 裕弌(北海道大学地球環境科学研究院)、楠本 成寿(富山大学大学院理工学研究部(都市デザイン学))、Gomez Christopher(神戸大学 海事科学部 海域火山リスク科学研究室)

[MTT47-P03] SfM/MVSを用いた簡易的な河床形状復元および水深評価に関する検討

*大澤 幸太1新里 忠史2三田地 勝昭3川村 淳1大川 真弘1 (1.三菱マテリアルテクノ株式会社、2.日本原子力研究開発機構、3.エイ・ティ・エス株式会社)

キーワード:SfM/MVS、水深計測、河床形状

【はじめに】
東京電力ホールディングス福島第一原子力発電所の事故により山地森林内に沈着した放射性セシウムの林外への移動は、森林斜面から渓流などの小河川に流入した懸濁物による運搬過程が主要であると考えられている。そのため、自然環境中の放射性セシウムの移動や分布の変化を評価するうえで、山地森林内における小河川の河床形状や土砂の堆積量の変化を詳細に把握することは重要である。
小河川の河床における堆積量の変化は、観測開始時に基準水面を設定の上、計測時における基準水面に対する水面の距離と水深から求められる。小流域河川における水深計測方法としてはスタッフやメジャーを用いた直接計測手法が一般的であるが、詳細な河床形状を把握する場合、調査に多くの時間と労力を必要とする。また、近年ではレーザーを用いた高密度で水深を計測する手法もあるが、機器が高価であり、高度な計測技術を要する。そこで、本研究では画像を用いて立体構造を復元することが可能なSfM(Structure from Motion)およびMVS(Multi View Stereo)技術(以降SfM/MVS)を用いて、簡易的、効率的かつ詳細に水深および河床形状を復元することとした。水中で取得した画像や空中から河床を撮影した画像を用いた構造復元の例は少なく、また、本研究同等の小流域河川を対象とした実地検証事例はこれまで報告されていない。本研究では通常の画像撮影方法とあわせて、水面や水中における光の特性を考慮した独自の撮影方法を実験的に採用し、両手法で撮影された画像からSfM/MVSを用いて復元した河床形状と水深について評価した。
【調査対象及び手法】
調査対象は福島県阿武隈山地南部のスギ林内を流下する河道幅1 m程度の小河川である。河道に対し直交方向に三角堰を設置し、土砂を堆積させた。
陸上から水面下を撮影する場合、水面や水中での光の特性が水面下の構造復元に悪影響を与える。特に水深は実際の値より浅くなる傾向がある。そこで本研究では、1)水面反射を考慮し、薄暮において投光機およびサーキュラーPLフィルタ使用した撮影、2)水中での光の減衰を考慮し、光源に市販されている青色フィルムを被せるとともに、RバンドとGバンドを除外する手法を試みた(以下、TM)。一方で、日中に通常の手法により撮影した画像を用いてモデルを復元し(以下、DM)、比較した。なお、調査時には従来手法である1 mm目盛メジャーを用いた水深の計測も実施し、復元精度の評価に使用した。
薄暮時における撮影では265枚、日中は297枚の画像を取得した。それぞれの撮影時間は30分程度である。本研究におけるSfM/MVS処理にはAgisoft社のPhotoScan Professionalを用いた。取得した画像の内部評定の要素補正は同ソフト付随するセルフキャリブレーション機能を用いて行い、復元したモデルの外部評定要素の補正には、対象範囲を内包する形で配置した測量用紅白ポールと水面の交点を補正点として用いた。復元されたモデルよりDSM(Digital Surface Model)を作成した。なお、三角堰近傍は落ち葉などが多く堆積しており、周囲で実測した水深よりかなり浅く、SfM/MVSより復元したDSMには落ち葉の高さや形状が含まれることから、復元精度の評価からは除外した。
【結果及び考察】
薄暮時に撮影した画像は、水面反射が大きく低減し河床の状況を詳細に表現できた。モデルの再現性に関して面的な評価を実施するために、実測値を内挿した値を基準とする一致率[(各モデル水深÷内挿値)×100]を算出した(図)。すなわち、100%で内挿値と一致、それ以上で深く復元、それ以下で浅く復元されていることを示す。水深20~25cmでDMは46%、TMは73%、水深10~15cmではDMは62%、TMは93%の一致率を示した。
TMはDMに対し高い一致率を示し、簡易的な手法ではあるものの、投光器等を用いた撮影手法は、画像の質を向上させ水深の復元性能を高めることが示唆された。またTMは堆積した落ち葉や枝などが復元されており、細かな河床形状や変化を把握することが可能であった。一方で、両モデルとも水深が増加するに伴い水深の復元性は一様に悪くなった。これは水面における光の屈折などの影響によるものと考えられる。更なる補正、撮影方法については今後の検討課題である。