[MTT49-P03] 大気中での爆風圧の定量評価及び低周波音/可聴音伝搬特性の直接計測
キーワード:爆風圧、直接計測、インフラサウンド
宇宙産業は各国の国家戦略として成長してきた。近年では、主に欧米の民間企業がロケット産業へ進出する際に国として支援することで宇宙産業は急速な成長を遂げている。
しかし、未だに地球近傍の宇宙空間の環境には謎が多く、例えば音波による振動が超高層大気を揺らし衛星運用などに影響を及ぼすことがある。このため、地球超高層大気の研究はますます重要になっている。本研究では音波伝搬特性を求めるとともに、音波伝搬路の大気モデルとの比較、検証を行う。また、ロケットの安全対策は必須であり民間ロケットでも重要な課題である。ロケットの爆発は、発生元の装置だけでなく、破片の飛散と爆風による破壊により周辺に影響や被害を及ぼす。
地上に設置した音波センサーの値からは、爆発によるエネルギーを算出し、爆心からの距離に対する爆風の影響を評価できる。予定外のロケットの爆発により得られたデータを用いて爆風の音波伝搬路を検証し、数値解析を用いて爆風の減衰計算を行い、爆風伝搬を求めることを目的とする。
MOMO3ロケット実験が2019年に行われる予定であり、成功裏に行われれば花火打ち揚げやロケット打ち上げ時の可聴音およびインフラサウンドを音源とし、地上観測とロケット搭載機器による直接計測データとの比較から中層~超高層大気における音波伝搬特性を求めるとともに、音波伝搬路の大気モデルとの比較、検証を行う。
北海道大樹町で行われたMOMO2ロケット実験のために複数のセンサーを地上多地点に設置した。地上観測に用いたセンサーはNano logger、SAYA製インフラサウンドセンサーおよびコンデンサマイク、ICレコーダ、カメラであり、射点を囲むように50 mから4 kmの範囲の計9地点に配置した。ロケット搭載用コンデンサマイクの同型品も600 m地点に設置した。図に各観測地点の位置関係を示す。
インタステラテクノロジズ(IST)2018年6月30日5時30分にMOMO2ロケットを打ち上げたがエンジントラブルにより推力を維持できず墜落し、打ち上げ実験は失敗した。ロケット側の理由により本来の目的は達成できなかったが、同時地上観測を行ったことでロケットの爆風圧を観測することに成功した。最も爆心に近く精度の高いセンサーによる計測結果を図2に示す。射点から50 m地点にて観測された爆風は正圧、負圧合わせて170 Pa(p-p)の圧力変化を記録した。また爆風圧はすべての観測地点で記録された。
爆風圧を観測した地点での圧力曲線を図3に示す。ロケット打ち上げ時の事例[1]に比べて音圧の減衰は比較的緩やかであり、低周波の特性が影響していることが分かる。
観測した爆風圧を単位面積当たりのエネルギーにして空間の全面積から今回の爆発のエネルギーを推定する。音の強さI(t) [W/m2] は単位時間に単位面積を通過するエネルギー量であり以下の式で表す。ここでP(t) は音圧、ρ は空気密度、c は音速を表す。またP(t)=P0sinωt と仮定し計算を行った。
I(t) = P2(t)/ρc [W/m2]
次に爆風観測地点と爆心距離から空間の表面積S [m2] を求め1波長の時間t [s] と音の強さIt から音のエネルギーE [J] を以下の式で表す。
E = 4πr2∫I(t) dt [J]
上式から減衰の影響をあまり受けていない50 m地点でのエネルギーがTNT換算にして0.0084 kg程度と得られ、爆発の規模はビデオ映像からの想像に比べて小さかったことがわかる。
今後は貴重な爆風圧データを用いて数値解析を行うことでより定量的なデータを算出したい。また、2019年打ち上げ予定のMOMO3実験に向けて準備する。
参考文献
[1] 木原大城, S-310-41号ロケット搭載PDIの開発と中層・高層大気中における音波伝搬特性の直接計測, 平成25年度高知工科大学 卒業研究報告,2013.
しかし、未だに地球近傍の宇宙空間の環境には謎が多く、例えば音波による振動が超高層大気を揺らし衛星運用などに影響を及ぼすことがある。このため、地球超高層大気の研究はますます重要になっている。本研究では音波伝搬特性を求めるとともに、音波伝搬路の大気モデルとの比較、検証を行う。また、ロケットの安全対策は必須であり民間ロケットでも重要な課題である。ロケットの爆発は、発生元の装置だけでなく、破片の飛散と爆風による破壊により周辺に影響や被害を及ぼす。
地上に設置した音波センサーの値からは、爆発によるエネルギーを算出し、爆心からの距離に対する爆風の影響を評価できる。予定外のロケットの爆発により得られたデータを用いて爆風の音波伝搬路を検証し、数値解析を用いて爆風の減衰計算を行い、爆風伝搬を求めることを目的とする。
MOMO3ロケット実験が2019年に行われる予定であり、成功裏に行われれば花火打ち揚げやロケット打ち上げ時の可聴音およびインフラサウンドを音源とし、地上観測とロケット搭載機器による直接計測データとの比較から中層~超高層大気における音波伝搬特性を求めるとともに、音波伝搬路の大気モデルとの比較、検証を行う。
北海道大樹町で行われたMOMO2ロケット実験のために複数のセンサーを地上多地点に設置した。地上観測に用いたセンサーはNano logger、SAYA製インフラサウンドセンサーおよびコンデンサマイク、ICレコーダ、カメラであり、射点を囲むように50 mから4 kmの範囲の計9地点に配置した。ロケット搭載用コンデンサマイクの同型品も600 m地点に設置した。図に各観測地点の位置関係を示す。
インタステラテクノロジズ(IST)2018年6月30日5時30分にMOMO2ロケットを打ち上げたがエンジントラブルにより推力を維持できず墜落し、打ち上げ実験は失敗した。ロケット側の理由により本来の目的は達成できなかったが、同時地上観測を行ったことでロケットの爆風圧を観測することに成功した。最も爆心に近く精度の高いセンサーによる計測結果を図2に示す。射点から50 m地点にて観測された爆風は正圧、負圧合わせて170 Pa(p-p)の圧力変化を記録した。また爆風圧はすべての観測地点で記録された。
爆風圧を観測した地点での圧力曲線を図3に示す。ロケット打ち上げ時の事例[1]に比べて音圧の減衰は比較的緩やかであり、低周波の特性が影響していることが分かる。
観測した爆風圧を単位面積当たりのエネルギーにして空間の全面積から今回の爆発のエネルギーを推定する。音の強さI(t) [W/m2] は単位時間に単位面積を通過するエネルギー量であり以下の式で表す。ここでP(t) は音圧、ρ は空気密度、c は音速を表す。またP(t)=P0sinωt と仮定し計算を行った。
I(t) = P2(t)/ρc [W/m2]
次に爆風観測地点と爆心距離から空間の表面積S [m2] を求め1波長の時間t [s] と音の強さIt から音のエネルギーE [J] を以下の式で表す。
E = 4πr2∫I(t) dt [J]
上式から減衰の影響をあまり受けていない50 m地点でのエネルギーがTNT換算にして0.0084 kg程度と得られ、爆発の規模はビデオ映像からの想像に比べて小さかったことがわかる。
今後は貴重な爆風圧データを用いて数値解析を行うことでより定量的なデータを算出したい。また、2019年打ち上げ予定のMOMO3実験に向けて準備する。
参考文献
[1] 木原大城, S-310-41号ロケット搭載PDIの開発と中層・高層大気中における音波伝搬特性の直接計測, 平成25年度高知工科大学 卒業研究報告,2013.