[MZZ51-P06] 松本達郎(1913-2008)の日本におけるプレートテクトニクス・パラダイム転換への貢献
キーワード:プレートテクトニクス、松本達郎、パラダイム転換、地向斜、付加体
海洋拡大説からプレートテクトニクス(PT)理論の成立期である1960年代から1970年代,松本達郎(1913-2009,当時九州大学層序学担当教授)は日本地質学界において指導的立場にあった。日本の層序学分野におけるPT論に伴うパラダイム転換は,地向斜論から付加体論への転換に代表される。松本は,このパラダイム転換に関わる国際・国内シンポジウム議長や国際委員,総合研究代表研究者,論文集編者などを歴任し,日本の地球科学を牽引した。四万十帯付加体論は松本が指導した坂井卓を中心として1970年代後半に構造地質的観点から提案された。中世古らによる放散虫研究を最初に評価したのは,松本が長年指導的立場にあった日本古生物学会である。しかしながら,松本が自らへの称賛を好まなかったこともあり,これらの貢献は忘れ去られ,従来の日本におけるPT受容史研究(泊, 2008)でも紹介されていない。本講演では,1960~1980年代前半の松本のPT論に関わる研究活動を紹介し,松本がPT論を通じた地球科学における相互理解と協力関係の実現のため,最も尽力し行動した人物であることを明らかにする。